研究課題/領域番号 |
18K03581
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
澤田 圭司 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (40262688)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 水素分子 / 振動状態 / 回転状態 / 衝突輻射モデル / 中性粒子輸送コード / ダイバータプラズマ / 周辺プラズマ / 分子活性化再結合 |
研究実績の概要 |
分子活性化再結合(MAR)など、プラズマ中の水素分子の各種反応の速度係数は、分子の振動・回転状態に大きく依存する。このため、我々は水素分子の電子・振動・回転状態の計4133準位を区別した水素分子衝突輻射モデルを構築している。電子基底状態については、MARを含む電子・プロトン・水素原子・水素分子との衝突による励起・脱励起や電離・解離が考慮されている。平成30年度、まずこのコードの出力を整備して、中性粒子輸送コードの各種反応速度係数の入力テーブルを作成した。 次に、核融合科学研究所LHDおよび我々のRF放電装置の中性粒子輸送コードに上記の反応速度係数の入力テーブルを組み込み、それぞれにおいてプラズマ中の水素分子振動・回転状態ポピュレーション分布の計算ができるようにした。LHDでは、ダイバータ部やダイバータレッグ部のプラズマの電子温度・密度の分布が必要になるため、核融合科学研究所にEMC3- EIRENEを用いた計算を依頼し、このデータをモデルに組み込んだ。 RFプラズマでは、実験で水素原子・水素分子発光スペクトルを計測し、発光線強度から水素原子・分子の密度分布を算出した。また、水素原子バルマー発光線のスペクトルプロファイルを計測し、水素原子の速度分布を算出した。これらについて、中性粒子輸送コードで得られる原子・分子密度および水素原子速度分布との比較を始めた。 どちらの比較においても、まだ初期段階ではあるが、計算モデル中で水素原子・分子が容器壁に衝突してプラズマに戻る際の扱いが計算結果に大きな影響を及ぼすことが明らかになりつつあり、今後この容器壁での粒子放出について、実験でのスペクトルが計算で再現されるようにモデルを整備していく。 重水素分子のモデル構築および中性粒子同士の衝突の中性粒子輸送コードへの組み込みにも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の項目で示したとおり、水素分子の振動・回転状態を区別した中性粒子輸送コードの構築が一通り完了した。放電実験を行って得られた水素原子・分子の分光計測データ(水素原子・水素分子スペクトル強度および水素原子バルマー線プロファイル)と計算結果との比較を進めており、実験を再現する壁での原子・分子の扱いを調べている。重水素分子のモデル構築および中性粒子同士の衝突の中性粒子輸送コードへの組み込みにも着手している。研究は申請書に沿って順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまで研究が順調に進展していることから、申請書に記載の内容に沿って研究を進めていく予定である。 研究実績の概要の項目で示したとおり、中性粒子輸送コード中の容器壁に粒子が衝突した際の扱いについて、実験で得られた原子・分子密度や原子の速度分布を計算が再現するようにコードの整備を進めていく。壁での扱いについては分子動力学による計算結果なども調査して有用なデータがあればコードに組み込んでいく。さらに、分子との衝突により分子の振動・回転励起をを引き起こすプラズマ中の電子・陽子等のエネルギー損失が計算できるようにする。中性粒子同士の衝突の中性粒子輸送コードへの組み込みも進めていく。また、収束計算による水素原子ライマン線の輻射輸送計算を中性粒子輸送コードにおいて行い、その影響を調べていく。これらと平行して、重水素分子のモデル構築を進めていく。
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