研究実績の概要 |
電子・振動・回転状態を区別した水素分子衝突輻射モデルにより算出したプラズマ中の各種反応速度係数を組み込んだ中性粒子輸送コードを整備し、LHDプラズマおよび信州大学高周波プラズマに適用した。 LHDの計算では、従来1辺4cmの立方体に近い形状のメッシュを1辺1cmに修正しダイバータ部やダイバータレッグ部の電子温度・密度のデータを精密に与えることができるようにした。ダイバータ板に流れ込むイオンの中性化による中性水素原子・分子のプラズマへの放出については、原子と分子の放出粒子数の比、分子の振動・回転状態を与える分子動力学法計算のコード整備が進められている。この計算結果(S. Saito, H. Nakamura, K. Sawada et al., Contrib. Plasm. Phys., e201900152, 2020)を我々の中性粒子輸送コードに組み込んだ。これらの改善を行い、LHDプラズマのすべての位置の分子の振動・回転密度分布を計算した(Keiji Sawada et al., Contrib. Plasm. Phys., e201900153, 2020)。 信州大学高周波プラズマの中性粒子輸送コード計算では、分光計測で得られる水素原子バルマー系列発光線強度・水素分子Fulcher帯発光線強度を最も再現するガラス壁、ステンレス壁での水素リサイクリングモデル(原子および分子の壁での反射モデル)を多数の試行計算により調べた。 上記の計算は電離プラズマを対象としたが、整備したコードは非接触プラズマにも適用可能である。本格的なダイバータプラズマ計算に先立ち、再結合プラズマの電子温度・密度をもつ1次元プラズマについて計算を行い、水素分子の振動・回転密度分布を算出し、分子活性化再結合の速度係数や分子との振動・回転励起衝突にともなう電子・プロトンのエネルギー損失係数を評価した。
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