研究課題/領域番号 |
18K03583
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 祐司 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (20198245)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トーラスプラズマ / MHD平衡の過渡応答 / 渦電流 / ディスラプション / 非軸対称性 / 垂直移動現象 |
研究実績の概要 |
本研究では、渦電流や装置系の過渡応答を考慮したMHD平衡解析に、非軸対称性がどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とし、新しい3次元統合シミュレーション・コードの開発と、これを用いた制御シナリオの開発・検討を行っている。 平成30年度は真空容器を流れる非軸対称渦電流を解析するため、渦電流の流れ関数に対する積分微分方程式を導き、軸対称渦電流計算に適用することでこの計算手法の妥当性を検証することができた。平成31年度はこの手法を非軸対称計算に適用するためのコード開発を行い、まだ一部改良の必要があるが、ある程度計算が可能となった。 一方、非軸対称性を考慮してコイル系、渦電流とプラズマ電流のカップリングを計算するには、軸対称の場合のように円電流のインダクタンスを用いることができず、局所的なベクトルポテンシャルの線積分が必要となる。そこで、たとえば真空容器の位置においてプラズマ電流が作る磁場とベクトルポテンシャルはVirtual-Casing法に基づき、三次元MHD平衡コードで得られた平衡データから計算する。平成31年度は、3次元MHD平衡計算とプラズマの周回電圧計算、輸送計算(今回は電流分布の時間発展のみ)、渦電流計算の各モジュールをrubyで統合したシミュレーションを行った。ここでプラズマ周回電圧計算と輸送計算は非軸対称性を考慮可能な計算モジュールであるが、渦電流に関しては非軸対称計算版が未完成であったため、シミュレーションは軸対称の場合とし、軸対称渦電流計算モジュールを用いた。また、最初の段階として平衡計算は固定境界条件を課して行った。計算結果は、プラズマ電流分布の時間変化が全プラズマ電流の減衰時間に及ぼす影響の重要性を示した。 今後、非軸対称渦電流計算モジュールの完成と、自由境界平衡計算を統合するためのモデリングの検討と開発が必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の通り、非軸対称性を考慮してMHD平衡の過渡応答を解析するための解析コードの各計算モジュールの開発が進み、令和2年度中の完成を見通すことができるようになっており、さらにこれらのモジュールを用いた統合シミュレーションで軸対称計算が可能になるなど、概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画調書の通り、令和2年度中に非軸対称渦電流計算モジュールの完成と、自由境界平衡計算を統合するためのモデリングの検討と開発を目指す。これらの課題が順調に進めば非軸対称性を考慮してMHD平衡の過渡応答を解析するための統合シミュレーションが可能となる。重要なマイルストーンとなるのは自由境界平衡計算におけるプラズマ境界の決定法だと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用計画に基づき解析用端末計算機1台購入を予定していたが、新型コロナウイルス流行で中国からの計算機部品等の輸入が滞り、次年度に使用を先送りしたため、約15万円の次年度使用額が生じた。翌年度はこの経費を含めて、解析用端末計算機2台(約25万円)、成果発表旅費(約10万円)、謝金(約20万円)、消耗品費(約10万円)程度の使用を計画している。
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