本課題では、変態超塑性型の超塑性成形(SPF)という次世代の加工法実現に向けた研究を行っている。超塑性とは、金属やセラミック材料において、通常の変形では発現しない “低荷重かつ高延性“を示す特異な現象であり、様々な材料加工に応用可能とされている。この現象は、一般的に、「微細粒超塑性」と「変態超塑性」に分類することが可能であり、前者はすでに航空宇宙分野で広く超塑性成形(SPF)へ展開されている。しかし、後者はいまだに工学的応用の段階には至っていない。一方で、申請者の専門分野(核融合工学)では、現在の成型技術の適用によりその特性が失われてしまうという低放射化鋼が開発された。そこで、そのような特性を損なうことなく成形するため、これまでSPFに不向きとされ、ほとんど着目されてこなかった変態超塑性に注目した。そして本課題では、低荷重・高延性による変形という特性をSPFに発展させるため、その基礎的段階を詳細に調査することを目指している。この研究を行うにあたり、「引張(前課題で終了)」「圧縮」「複合変形」の段階が必要であると研究開始当初より考えており、2018年度(1年目:平成30年度)~ 2019年度(2年目:令和1年度)には、圧縮段階に必要な熱変動圧縮装置のセットアップを行い、丸形圧縮試験体を用いて熱変動による圧縮試験を実施した。さらに2020年度(3年目:令和2年度) ~ 2021年度(4年目:令和3年度)は、民間企業の協力のもと、低放射化フェライト鋼に最も近い市販材料を用いて、ガス圧による「複合変形」の調査に進んだ。2022年度(5年目:令和3年度)は、このガス圧の効果を検証し、この変形誘起のためには、急速温度サイクルが必要不可欠であることを明らかにした。
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