研究課題/領域番号 |
18K03586
|
研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
山田 一博 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (80222371)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | トムソン散乱 / ポリクロメーター / 核融合プラズマ / プラズマ計測 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,近年の核融合プラズマの研究において話題となっている電子運動の異方性に着目した研究を行います。核融合研のLHDプラズマの電子運動の異方性の直接的な実験検証を目的とし,LHDトムソン散乱装置において後方散乱計測と前方散乱計測の両者に対して測定温度領域Te=100 eV - 20 keVの範囲で計測誤差がともに10 %以下となるように最適化したポリクロメーターを製作します。 ポリクロメーターの設計開発では,波長チャンネルのフィルターの選定,光検出器(APD)の選定の3つが特に重要になります。2019年度では次の「現在までの進捗状況」で述べる,筐体の設計,フィルターの選定の最適化,光検出器(APD)の試験,プリアンプおよび高圧電源回路の試験,レーザー光学系およびデータ収集系の改良の5点を進めました。 波長チャンネルのフィルターの選定においては,波長チャンネル数10のポリクロメーターを模擬するシミレーションプログラムを製作し,種々の最適化の方法を検討しました。 APDの選定においては,当初予定していたAPDが製造中止となり,必要数を十分に揃えることができなくなったため,代替モデルの選定と試験を行いました。APDの基本性能を試験するために製作したテストベンチを用い,感度,ノイズ,S/N比のチェックを行いました。APDの基本的な性能データと最終的な計測結果に及ぼす影響(実験誤差)をいろいろなパターンで評価し,本研究課題で最適と考えられるモデルと動作条件を決定しました。 また,前方散乱計測と後方散乱計測に必要となるレーザーの遅延光学系および遅延信号を扱うためのデータ収集系の設計と改良を行いました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
◯ 筐体の設計:本研究で製作するポリクロメーターの筐体の設計と試作しました。最終案は当初の案と異なるものとなりますが、当初案とほぼ同等かそれ以上の性能が期待できます。 ◯ フィルターの選定と試験:本研究で製作するポリクロメーターは10の波長チャンネルを持ちますが、後方散乱計測計測と前方散乱計測の両方で、測定温度領域Te=100 eV - 20 keVの範囲で計測誤差がともに10 %以下となるフィルターの設計、最適化を行いました。また、筐体の設計と関連し、フィルターの使用方法や組み付け誤差などに起因する性能の劣化を評価し、問題ないことを検証しました。 ◯ 光検出器(APD)の選定と試験:当初予定していたAPDは製造中止となり,本研究で必要な個数の半分しか入手できない状況になったため,代替品の選定と試験を行いました。 ◯ プリアンプと高圧電源回路の設計と製作:上記のAPDからの信号を増幅するためのプリアンプとAPDを駆動するための高圧電源回路を製作し、その試験を行いました。どちらも問題なく動作することを確認しました。 ◯ 本申請課題では,後方散乱光と前方散乱光を100 nsecの時間差をつけて測定します。後方散乱測定と前方散乱測定の間に遅延時間を設けるために,レーザーのビーム経路に遅延光学経路を組み込みました。また,これに併せてデータ収集系も時間差で測定できるよう遅延回路システムを導入しました。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度はこれまでに開発したポリクロメーターを用い, LHDプラズマ実験において基本的な動作,性能に過誤がないことの検証を第一の目標とした研究を行います。本研究で目標とする測定温度領域Te=100 eV - 20 keVの範囲で後方散乱計測の測定結果と前方散乱の計測結果の計測誤差がともに10 %以下となることの検証を目標とします。本研究では電子温度の測定が第一であり,電子密度の測定は副次的なものとなりますが,電子密度の絶対測定についても同時に進めたいと考えています。この場合,これまでのレイリー散乱ではなく,ラマン散乱を利用した機器較正を用います。これらの成果は2つの国際会議と2つの学術論文において報告予定です。下記に具体的なスケジュールを示す。 2020.4 - 2020.6月 ポリクロメーター最終チェックおよび精密較正 2020.7 - 2020.8月 レーザー整備およびレーザー伝送系アライメント 2020.9 - 2021.1月 LHDマシンタイムにおいてデータ取得 2021.2 - 2021.3月 データ解析
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に予定していた国際会議出席を2020年度の国際会議へ先送りすることとしたため,主に旅費分が次年度使用額として残りました。これまでの成果は2020度の2つの国際会議(31st Symposium on Fusion Technology, 20th International Congress on Plasma Physics)にて報告予定です。
|