本研究課題では,近年の核融合プラズマの研究において話題となっている電子運動の異方性に着目した研究を行いました。核融合科学研究所の大型ヘリカル装置LHDにおいて,プラズマの電子運動の異方性の直接的な実験検証を目的とし,LHDトムソン散乱装置において後方散乱計測と前方散乱計測の両者に対して測定温度領域Te=100 eV - 20 keVの範囲で計測誤差がともに10 %以下となるように最適化した新しいポリクロメーター(波長分析器)を製作しました。 ポリクロメーターの設計では,波長チャンネルのフィルターの選定,光検出器(APD)の選定とプリアンプ回路の性能が重要になります。2020年度では(1) 筐体の改良,(2) フィルターの選定の試験,(3) 光検出器(APD)回路の改良を行いました。 筐体の改良については,いくつか細かな箇所の寸法を修正する小改良を行いました。また,波長チャンネルのフィルターの選定においては,シミレーションプログラムの結果をもとに最適な組み合わせを決定しました。APDのプリアンプ回路の改良を行い,種々の動作試験を経て最終版を製作しました。 また,前方散乱計測と後方散乱計測に必要となるレーザーの遅延光学系および遅延信号を扱うためのデータ収集系の設計と改良を行いました。LHD本体に設置されているレーザー窓にトラブルが発生し,安全なレーザー伝送ができない状況になったため前方散乱計測は断念しましたが,来年度に再挑戦する計画です。
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