研究課題/領域番号 |
18K03588
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
後藤 基志 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00290916)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水素ペレット溶発雲 / 粒子供給空間分布 / 分光計測 / バルマー系列線 |
研究実績の概要 |
プラズマ中に入射された固体水素ペレットの周囲に形成される溶発雲と呼ばれる高密度プラズモイドに対して空間分解分光計測を行い、磁力線に沿って伸張するプラズモイド内の電子温度および電子密度の磁力線方向空間分布を求めた。空間分布計測の原理は以下の通りである。ペレットは外側ポートから赤道面上、ほぼプラズマ大半径方向に入射される。形成されるプラズモイドはおおよそ水平方向に近い磁力線方向に伸張する。ペレットを同じ赤道面上の右斜め後方から観測すると、ほぼ水平に伸張したプラズモイドが目の前を左から右へ横切って移動する。したがって、鉛直方向に伸びるスリット状に観測視野を制限し、ペレットが視野を横切る時間よりも十分に高速な時間分解能で計測を行えば、プラズモイド伸張方向の空間分布が時系列データとして得られる。今回、コア系100μmの光ファイバーケーブルとシリンドリカルレンズによって、観測対象位置に置いておよそ20mm程度の幅に視野を制限することができた。光ファイバーケーブルの他端は分光器に接続され、スペクトルとして記録される。検出器として、ラインスキャンカメラと呼ばれる1次元のCCDを採用することで、約11μsの高速なサンプリグ時間でスペクトル計測が可能となり、結果として、プラズモイド全体を20フレーム程度で分解して計測することができた。波長範囲はおよそ350nmから800nmで、ここには水素原子バルマー系列線が全て含まれる。一方、データ解析に用いるスペクトル形成コードを整備した。完全局所熱平衡を仮定する場合、原子密度とイオン密度の比を入力パラメータとし、励起準位ポピュレーションは衝突輻射モデルにより求める汎用性の高いモデルを用意した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
使用している検出器のノイズレベルが不安定で、チャンネルの一部で強い光を検出すると、全体的なバックグラウンドレベルが変動することが判明した。そのため、スペクトルの微弱な連続光成分を正しく評価することができず、スペクトルの解析からプラズマパラメータを求めることができていない。別の検出器を新たに導入し、この問題を解決する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上記の問題については、すでに別の検出器を手配し、同様の問題が発生しないことを確認している。次回の実験では、有効なデータを取得できると考えている。また、現在は磁力線ができるだけ水平方向を向く位置での観測を優先し、プラズマ中心近くのプラズモイドを観測対象としているが、多くのペレットはプラズマ中心まで到達せず視野に入る前に消滅することが明らかになった。そのため、観測ポートの位置を変更し、確実に発光が確認できるプラズマ周辺部のプラズモイドを観測対象とする。スペクトル解析に用いるシミュレーションコードはほぼ整備を完了しており、データ取得後直ちにデータ解析を開始する準備ができている。具体的には、スペクトルの解析からプラズモイド内の電子温度および電子密度の分布を求め、それらの情報を用いて磁力線方向に拡散する粒子フラックスを評価する。このような解析をさまざまな放電条件(磁場配位、磁場強度、加熱パワー)において得られたスペクトルに対して行い、プラズマへの粒子供給空間分布の放電条件に対する特性の違いを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
分光システムを新たに制作するにあたって、実際の光量等を調査した上で詳細を設計するため、他の目的に使用している既存の分光器および検出器を用いて試験的な計測を試みたところ、購入を予定していた検出器に問題があることが明らかとなった。そのため、別機種の検出器の選定および性能検査を行う必要があり、実際の分光器の製作は次年度に行った方が良いと判断した。すでに性能検査は終了し満足な結果が得られたため、ただちに分光システムの製作を開始することが可能で、次回の実験までに計測の準備を完了することができると考えている。
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