LHDにおいて、水素ペレット溶発雲に対する可視スペクトル計測を行った。水素ペレットは磁場閉じ込め核融合プラズマにおいて燃料供給の目的で入射するもので、プラズマ中ではその周囲に局所的な高密度プラズマが形成されるため強い発光を伴う。スペクトルは、いくつかの離散的な発光線と連続光から成る。発光線は水素原子のバルマー系列線であり、連続光は主に、水素イオンの輻射再結合過程に伴うものと、水素原子の輻射付着過程に伴うものを含む。主に発光線の広がりから電子密度を、連続光スペクトルの形状から電子温度を推定することができ、また、スペクトル全体は完全局所熱平衡モデルにより良く説明されることが確認されており、このことは、スペクトル全体の形状を電子温度と電子密度のみをパラメータとしてフィッティングを行うことができることを意味する。 発光線の広がりはシュタルク広がりによるものであるが、極めて高密度であるため、主量子数の大きい上準位からのバルマー系列線は疑似的な連続光として観測され、輻射再結合に伴う連続光へとシームレスに繋がっている。これまでのLHDで計測されたスペクトルの解析では、この疑似連続光領域はプラズマパラメータを決定するためのフィッティングにおいて重要でないと判断できたため、解析を行う波長領域から除外していた。しかしながら、溶発雲スペクトルの空間分部計測を実施し、溶発雲周辺部の比較的電子密度の低い領域では、疑似連続光領域のスペクトルがパラメータ同定において重要であることが明らかとなった。 今回、各エネルギー準位を、占有確率法と呼ばれる離散状態と連続状態の混合状態として取り扱う手法を導入して疑似連続光領域を含むスペクトル全体に対するフィッティングを実施することで、占有確率法導入前と比べてより妥当なパラメータ同定が可能となった。この結果はペレット溶発シミュレーションの精度向上に貢献するものである。
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