研究課題/領域番号 |
18K03590
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
伊神 弘恵 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (10390634)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高密度プラズマ加熱 / プラズマ波動相互作用 / プラズマ境界領域 |
研究実績の概要 |
本研究では前年度までに、大型ヘリカル装置(LHD)において強磁場側からの基本異常波(X)モードの入射によるプラズマ点火と、基本正常波(O)モードの遮断密度にほぼ等しい線平均密度のプラズマにおける加熱を実証している。今年度は線平均密度がOモードの遮断密度の1.2倍となるプラズマを中性粒子ビーム入射を用いて保持し、Xモードの強磁場側斜め入射を行った。100%/7Hz の電力変調入射に同期した蓄積エネルギーとECE信号の変調が観測され、基本波による電子サイクロトロン共鳴加熱の適用密度領域がOモードの遮断密度異常の領域まで拡張できることを実証した。今年度は入射方向と入射偏波の微調整を行った。入射方向をわずかに変えることで加熱効率が変化した一方で、入射偏波を右回り円偏波から変えた場合には、同一入射方向の設定で加熱効率低減と反射波の影響と思われるジャイロトロンの異常発振が発生した。効率的な加熱のためにはプラズマ周辺部における屈折の効果及び入射電力のXモード及びOモードへの結合効率を数値解析を用いて適切に見積もる必要があることが推測される。 TASK-WF2Dコードを用いた有限要素法による波動光学的解析では、これまでプラズマ境界において磁場に対して斜めに伝播するOモードあるいはXモードの偏波に対応する有限幅の電場分布を境界値として与えて計算を行った場合に、境界値として与えたモードと異なるモードの伝播も発生する「モード混合」問題を有していた。本科研費にて新たに導入した計算機を用いて真空中の波長の1/40サイズの計算メッシュを設定して計算を行ったところ、「モード混合」の割合が無視できるほど小さくなったことから、現在の計算系における「モード混合」は数値的な問題であることが明らかになり、OモードとXモードの屈折率が近いプラズマ境界領域でも正確な波動伝播計算が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス 感染症の流行の影響で、4月から5月にかけて居住自治体の保育園の登園自粛が要請され、家庭にて子どもを保育する必要が生じたために研究時間が制約され、実験準備と数値解析ルーチンの開発に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
強磁場基本Xモード入射加熱実験を実施した大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ境界部のパラメータ分布を用い、TASK-WF2Dコードによるプラズマ境界領域における有限幅波動の屈折・モード混合・プラズマ揺動による散乱の特性解析を行う。このために、既に開発済みの磁場・密度・温度分布作成ルーチンに加えて、密度揺動分布を2次元断面上に生成するルーチンを新たに作成する。また、TASK-WF2D計算では広い計算領域に細かい計算メッシュを与える必要があるため、PCのメモリ増強を行う。 上記のLHDの2次元断面上のパラメータ分布を用いた系において、TASK-WF2Dコードを用いた計算と光線追跡計算を組み合わせた数値解析を行い、真空中から入射された波から主閉じ込め領域を伝播するXモード/Oモードに結合したそれぞれの成分の吸収電力を求める。この数値解析で求められた吸収電力と、実験結果から推定される吸収電力の比較を行う。 また、周辺部でのプラズマ波 動相互作用の一つとして非線形的に励起される可能性のあるMHz-GHz帯の波動をECEの揺動として計測することを試みる。 これらの研究の結果をまとめて学術雑誌への投稿、国内及び国際学会における研究発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の拡大により参加を予定していたフランスで開催される国際ワークショップが中止となり、旅費支出がなく、また研究発表用のノートPCの購入を見送ったために次年度使用額が発生した。 今年度は適切な国際学会に(おそらくリモートで)参加して本研究を発表するが、外国旅費として使用せずにすむ費用はメモリ増設費用として使用する。これは波動光学的解析の進展により、さらにメモリを増設したPCでの計算が望ましいことが明らかになったためである。また、周辺部でのプラズマ波動相互作用の一つとして強磁場側からのXモード入射によって非線形的に励起される可能性のあるMHz-GHz帯の波動をECEの揺動として観測するために必要な、計測コンポーネントの増設に使用する。
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