研究課題/領域番号 |
18K03593
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
相羽 信行 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂研究所 先進プラズマ研究部, 上席研究員 (20414584)
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研究分担者 |
本多 充 京都大学, 工学研究科 附属工学基盤教育研究センター, 教授 (90455296)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁場閉じ込め核融合 / トカマクプラズマ / エッジローカライズモード / QH-mode / 拡張MHDモデル |
研究実績の概要 |
令和3年度は,研究代表者が開発したプラズマ回転およびイオン反磁性ドリフト効果を考慮した拡張MHD安定性解析コードMINERVA-DIを用いて,JT-60装置および米国DIII-D装置におけるエッジローカライズモード(ELM)抑制運転の1つであるquiescent H-mode (QH-mode)におけるMHD安定性について解析を行った.昨年度までに,これらの装置におけるQH-modeでは,プラズマ電流を主因として発生するMHDモード(ピーリングモード)が回転によって安定化されることを明らかにし,この安定化がQH-modeにおいて観測される周辺高調波振動(Edge Harmonic Oscillation, EHO)を引き起こす要因と考えられることを示した. 今年度は,この安定化を引き起こすプラズマ回転として,昨年度までの解析で用いていた実験時に計測された不純物(炭素)イオンの回転ではなく,同回転およびイオン反磁性ドリフトにより生じる径電場は燃料(重水素)イオンにおいても同様であるという仮定を用いて,燃料・不純物両イオンの回転を考慮して見積もった一流体回転の影響について解析を行った.その結果,不純物イオンの回転を考慮した場合に比べて一流体回転を考慮した場合には安定化効果がより強く表れることを明らかにした.この傾向は,解析対象としたJT-60の1放電およびDIII-Dの3放電のいずれにおいても同様であり,さらに同回転を考慮した計算で不安定になり得るMHDモードの波長は実験で観測されたEHOの最も振幅の大きい磁場揺動の波長と一致することが確認できた.これらの結果は一流体回転がQH-modeのMHD安定性・EHO発生条件に重要な影響を与えることを示しており,これらをまとめた論文がNuclear Fusion誌に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
量子科学技術研究開発機構および米国General Atomics社の共同研究者の協力を得て,JT-60装置および米国DIII-D装置におけるELM抑制運転(QH-mode)のMHD安定性解析を行い,QH-mode時に観測される周辺高調波振動(EHO)の発生原因の特定,特に発生の鍵となるプラズマ回転として燃料・不純物両イオンの回転を考慮することが重要であることを示すことができ,この結果が投稿論文として出版されるなど概ね順調に研究成果を得ることが出来た. しかし,新型コロナウィルス感染症の影響により,General Atomics社への出張などが出来ず,共同研究者との議論や実験データの取得にやや不都合が生じており,研究期間を1年延長して研究計画の完遂を試みることとした.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた成果を基に,JT-60装置および米国DIII-D装置の他QH-mode放電の解析などを進め,より定量的な評価を進める.特に,DIII-D装置で近年利用されている燃料イオンの回転の直接計測などの結果を用いてより精密な解析を実現し,QH-modeにおいて観測されるEHOとMHD安定性との関係について更なる理解を得ることを目指す. また,今回改めて不純物イオンの回転を考慮した一流体回転がMHD安定性に与える影響が重要であることを明らかにしたことで,原型炉などで想定される金属壁から放出される不純物の影響を数値計算で模擬した場合にどのような変化が生じるかの解析を試みることで,本研究課題の目的である,金属壁を持つ核融合炉におけるエッジローカライズモード抑制方法を検討する上で,QH-modeの有効性を議論するために必要な物理理解を得ることを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により,共同研究者の所属する国外研究機関への出張が実施できなかったため,研究期間を1年延長して同出張を実施することで研究の完遂を目指すため.
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