研究実績の概要 |
(1) 短片化SWNTを用いたアルコールプラズマCVD(AL-PECVD)法のSWNTクローン成長への有効性を更に堅実に検証するために,欠陥性炭素環除去と高反応性炭素端の露出化を齎す純H2ガスを多量(≦300 sccm)に導入した.その結果, Ar/H2(3%)の場合に観測されたSWNTの平均的な長大化が一層顕著になることに加えて,数十μm以上に亘る極端に長大化する現象が観測された.また,AL-PECVD前後でSWSNTの直径を与えるラマンスペクトルのラジアルブリ―ジングモード(RBM)の周波数が変化しなかったので,PECVDによるSWNTのクローン成長増強が初めて示された.この確証を目的に,特定カイラリティの高純度半導体 SWNTの実験を継続中である. (2) SWNTの極限に短い部分構造を持つカーボンナノベルト(CNB)を用いるクローン・AL-PECVD 成長実験では,新型コロナ禍の影響でその入手が遅延した.代わりに酷似形状のカーボンナノリング(CNR) を探し,「原型小分子からの」”クローン成長単一カイラリティSWNT創製を目指した.CNRとして各々直径0.8 nmと1.7 nmのシクロパラフェニレン[6]CPPと[12]CPPを用い,これらに500 ℃のアルコール熱CVD(AL-CVD)法を適用したが,CNRの熱分解に終わった.しかし,同温度のAL-PECVD法では両CPPsの直径とほぼ同じ値を与えるラマンスペクトルのRBMが観測され,SWNTへのクローン成長が検証されつつある.数ヵ月後に本来のCNBが入荷されるので,そこで最終的実証実験を行う予定である. (3) (1)の実験において,SWNTのクローン成長プロセス半ばでのプラズマ密度と電気炉温度の上昇により,グラフェン薄膜が形成されたので”クローン成長SWNT/グラフェン”ハイブリッド創製の可能性を見い出した.
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