本研究では、計測対象のプラズマとして様々な応用で期待されるカーボンナノ材料の合成・処理に利用される水素ガスをベースとした水素系プラズマにおいて、プラズマ光源内の自己吸収反応を制御した自己反転インコヒーレント光源によりプラズマ内の水素原子の並進温度(エネルギー)変化の吸収分光法による計測とともに、同プラズマ内の水素原子の表面損失確率およびエネルギーに起因する水素原子の寿命の変化計測を試み、原子状ラジカルのエネルギーを基軸にした表面反応機構の解明に向けたプラズマ光源を用いた真空紫外吸収分光計測技術の可能性を調査した。 本研究ではまずマイクロホローカソード光源内の自己吸収現象の変化に伴う計測対象プラズマ内の水素原子による光吸収率の変化を計測した結果、比較的高い圧力条件下で生成した計測対象プラズマにおいて、光源内の自己吸収の影響増加に伴う光吸収率の減少傾向に大きな差異が観測された。これは計測対象プラズマの生成条件に依存して水素原子の温度が変化したことに起因するものと考えられる。次に測定対象プラズマの各生成条件下においてプラズマOFF後の水素原子の寿命を計測した結果、上記の自己吸収現象に伴う光吸収率の減少傾向と同じ圧力が比較的高い条件下において、水素原子の寿命に減少傾向が確認された。理論的には原子の拡散による寿命は存在する空間内の圧力に比例し増加する。しかし、圧力が高い条件下で寿命の減少傾向が確認された結果は、生成された計測対象プラズマ内の水素原子の温度が変化したことにより、その装置内での反応にも影響を及ぼした可能性を示唆するものと考えられる。以上から、自己吸収光源を用いた原子の温度変化を推定する自己吸収光源を用いた本手法により、プラズマプロセスで重要となる原子の反応に関し、粒子温度をパラメータとした、より進んだ考察が可能であると示すことができた。
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