研究課題/領域番号 |
18K03603
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
布村 正太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 上級主任研究員 (50415725)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プラズマエレクトロニクス / 半導体 / シリコン / 水素化アモルファスシリコン / 欠陥 |
研究実績の概要 |
本研究では、プラズマプロセス下における半導体材料の水素原子起因の欠陥の発生と修復について、その素過程を明らかにすることを目的とする。具体的には、水素原子を含むプラズマを半導体材料に照射し、プラズマ照射時の半導体材料の電気的・光学的特性を実時間・その場測定する。測定には、光電流計測及び分光エリプソメトリ法を用いる。対象とする半導体材料は、結晶シリコン、水素化アモルファスシリコン及び関連化合物とする。これらの材料は、各種半導体デバイス、太陽電池、イメージセンサー等に広く用いられ、産業応用上極めて重要な材料として知られている。 本年度は、水素化アモルファスシリコン成長時における結晶シリコン内の水素原子起因の欠陥の発生と修復を詳細に調査した。以下に得られた成果を記述する。 1)結晶シリコン上での水素化アモルファスシリコン成長時、プラズマから供給される水素原子は水素化アモルファスシリコン内を拡散し、結晶シリコン表面に到達する。水素化アモルファスシリコン内における水素原子の拡散は、数ナノメートル程度である。2)結晶シリコン表面近傍に到達した水素原子は、水素化アモルファスシリコンとの界面に欠陥を形成する。欠陥の発生のメカニズムは、水素原子が界面近傍の弱い結合を切断しダングリングボンドを形成すると考えらえる。3)水素原子の供給量が多い場合、一部の水素原子は、水素化アモルファスシリコン内を拡散通過し、最終的には結晶シリコン内部に侵入する。この結晶シリコン内に侵入した水素原子は、結晶内のシリコンの結合を切断しダングリングボンド等の欠陥を形成する。4)これら水素原子起因の欠陥を抑制するためには、水素化アモルファスシリコンの成長初期にシランプラズマ等を用いて水素原子供給量を抑えることが重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載の通り、半導体材料の欠陥の発生・修復に関するメカニズムを調査しており、おおむね研究は順調に進んでいる。 本年度前期では、水素化アモルファスシリコン成長時の結晶シリコン内の水素原子起因の欠陥を調べた。具体的には、光電流計測及び分光エリプソメトリ法を用いて、結晶シリコン表面の電気的・光学的特性の変化を実時間その場計測した。 本年度後期では、水素化アモルファスシリコン及び結晶シリコン内の構造解析や組成分析を進めた。具体的には、断面TEM観察やSIMS測定を行った。これらの分析より、界面付近では、膜密度の低い水素化アモルファスシリコンが形成され、また、多くの水素原子が存在することが示唆された。また、膜密度の低い界面付近は、大気暴露に伴い自然酸化しやすいことも見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度得られた成果をもとに、半導体薄膜形成時の欠陥の発生と修復に関するメカニズムを総合的に解明する研究を進める。 具体的には、結晶シリコン上においてワイドギャップ半導体材料形成時における欠陥の発生と修復を解明する。また、半導体材料内の水素原子拡散長や失活過程を調査する。得られた結果を踏まえ、各種半導体デバイス(ロジック、メモリ、イメージセンサー、太陽電池等)の性能向上に関する指針を提供する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定の物品が競争入札等により安価に購入できたため、また、装置を自作する等で出費を抑えられたため、余剰分を次年度へ繰り越す。当初の予定通り研究を実施する。繰り越し分は、研究を加速させるための追加実験の費用に充てる。 1.SOIウエハ(数枚)、シリコン基板(100枚)、酸化膜付シリコン基板(100枚)等の消耗品を購入。2.分光エリプソメトリの電源部品の更新。3.シリコン薄膜の成膜に必用な特定高圧ガス。4.研究成果の発信のため、国内外の学会への参加費用。
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