本研究の目的は、医療分野における大気圧プラズマ照射溶液の利用を加速するために必要となる、新たな溶液中における活性種分布制御手法の開発である。そのため、これまでに研究を行ってきた投入電力の変化による気相中の活性種制御技術を用い、液中の活性種コントロールを試みた。 本年度の主な研究課題は、前年度まで試験を行ってきた誘電体バリア放電低温大気圧プラズマを用いて製作した溶液の殺菌能を見積もり、最近の殺菌メカニズムに対して考察を行うことである。その際、前年度同様、溶液の一部を液滴状にすることによって、プラズマガス・溶液間の接触表面積を変化させ、投入電力を変えることによる気相中活性種の制御と組み合わせて、液相中の活性種制御を試みた。以下に得られた成果を記載する。 1)プラズマ投入電力を0.8から2 Wまで変化させることにより、気相中の主な活性種がオゾンが主であるモード(オゾン濃度が2000 ppm程度)から酸化窒素などの活性窒素種が主であるモード(オゾン濃度がほぼ0 ppm)まで制御できる。このプラズマ源を用い、蒸留水に対してプラズマ照射を行い、プラズマ照射溶液を生成した。液滴が存在しない場合、液相の活性種は気相中の活性種分布に従い制御出来た。つまり、投入電力が低い時には液中の主な活性種はオゾンであり、投入電力が高くなると硝酸イオンが主となる。液滴が存在する場合、わずかに溶液中のオゾン濃度が増える。 2)上記のプラズマ照射溶液を用いて、G. stearothermophilus芽胞に対しての殺菌能を調査した。その結果、プラズマ投入電力が低い時、つまり液中の主な活性種がオゾンのときに殺菌能が高いことがわかった。また、サンプルを6分間の間プラズマ照射水に接触させることにより、滅菌できることを明らかにした。この殺菌能に関して、気相中に液滴がある場合とない場合の差はほんと見ることができなかった。
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