研究課題/領域番号 |
18K03606
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉田 至順 東北大学, 理学研究科, 助教 (30386635)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 理論宇宙物理 |
研究実績の概要 |
今年度の主な研究実績は次の3つである。 (1) 強いトロイダル磁場と弱いポロイダル磁場を持つ磁場星の平衡解を一般相対論の枠組みで磁場を摂動で扱うことで求めた。 (2) 磁場を非摂動的に扱い一般的な磁場形状を持つ磁場星の平衡解を一般相対論の枠組みで近似を用いずに求めた。 (3) 磁場星の安定性解析を行う為の定式化に取り組み、自己重力を含まない場合との違いと自己重力を含む場合の扱い方について、解析を進めた。 (1), (2) は安定性解析を行う為の平衡解を求めたものである。(1) に関しては実際の安定性解析を行うニュートン重力の場合の解析も含むもので、安定性の解析法が完成した場合に使う事ができる。物理的には (1) はこれまでに全く考えられていなかった新しいタイプの解であるが、プラズマ核融合の研究によると、安定である可能性の高い磁場の形状であり、安定性解析で安定である事が分かれば、宇宙物理的には非常に重要な解となる。数値シミュレーションから予想される中性子星の磁場形状と同様な解であり、現実的な中性子星の磁場形状である可能性も高い。この研究結果は既に論文として Physical Review D 誌上で公表されている。(2) は、琉球大学の瓜生氏ほかと共同で行った研究である。磁場星がトロイダル磁場とポロイダル磁場の両方を持つ場合は、軸対称定常を仮定しても、時空の構造が複雑になり、解を求める事が難しい事が知られている。本研究では座標条件も数値的に解く事で、一般相対論的に無矛盾な磁場星の平衡解を求める事に成功した。この研究成果は、現在、論文としてまとめている途中で、次年度中に投稿予定である。(3) は、次年度の前半に完成させ、実際の数値コードの開発に進む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、磁場星の平衡形状の研究に進展があり、平衡解の研究に多くの時間を使った。そのため磁場星の安定性の研究に使う時間が少なくなったのが理由の一つである。また、もう一つの理由としては、実際に解析を進めたところ、プラズマ核融合の分野で使われている手法は、自己重力が無い場合に成り立つ性質を多く用いている事が分かり、自己重力を含む場合には多くの修正が必要になる事が分ったためである。したがって、当初の予想よりも定式化に時間が掛かっているため、安定性解析の研究の進捗状況としては、やや遅れているという事になった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、磁気流体が自己重力を含む場合と含まない場合の違いや自己重力を含む場合の扱い方についての理解はほぼ完了している。したがって、現在行っている安定性解析の為の定式化完成までには、それほど時間が掛からないと予想されるので、次年度の前半に定式化を終え、実際の数値コードの開発へ進む予定である。また、磁場星の平衡解の研究についても現在いくつかのアイデアがあり、それを実際に研究する事でいくつかの成果が得られると予想される、従って、引き続き、磁場星の安定性の研究と平衡解の研究を平行して行い、一定の研究成果を出しつつ、安定性の解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由は次の二つである。 (1) 現在、安定性解析の定式化の途中であり、まだ実際の安定性の数値解析を行う段階にない。そのため、高性能の計算機が必要なく、まだ計算機を購入していない。計算機は、一般的に言って、購入時期が遅いほど性能が良いため、必要になってから購入した方がより多くの成果が出せる。 (2) 研究の進捗状況がやや遅く、研究成果発表の回数が当初の予定より少ない。そのため、旅費と論文投稿料の使用額が当初の予定よりも少ない。
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