研究課題/領域番号 |
18K03609
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中山 和則 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90596652)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 暗黒物質 / インフレーション / アクシオン |
研究実績の概要 |
(1)近年、ある種の磁性体中において、電磁場とトポロジカルな結合をもつアクシオン的な励起モードが存在することが指摘されている。我々は具体的なトポロジカル磁性体模型において、素粒子アクシオン暗黒物質と固体中のアクシオンの相互作用を求め、これを利用した暗黒物質の新たな検出方法を提案した。 (2)以前の我々の研究において、特定のインフレーション後の再加熱期における爆発的な粒子生成と、それに伴うユニタリティの破れが指摘されていた。この現象を、場の空間曲率という概念を使って一般化し統一的な理解を得ることに成功した。 (3)アクシオン・ダークフォトン暗黒物質のミニマルな模型はU(1)対称性を破るヒッグス場を含む。このヒッグス場の宇宙論的なダイナミクスとそれに伴うアクシオン・ダークフォトン暗黒物質の生成量を詳細に調べ、現在の暗黒物質を説明する新たなパラメータ領域を開拓した。 (4)標準的な熱的残存シナリオにおいて、暗黒物質の一部は宇宙の晴れ上がり頃の時期においても対消滅を続けており、宇宙背景放射の非等方性に影響を与えることが知られている。我々は新たにヘリウムの再結合への暗黒物質対消滅の影響を数値コードに取り入れ、対消滅断面積に対して最新の制限を得た。 (5)宇宙の初期密度揺らぎについて、宇宙論的な大スケールの揺らぎは観測から精密に決められているが、小スケールの揺らぎの大きさについては現状あまり制限されていない。我々は、小スケールの揺らぎが大きくなるとダークマターハロー形成率が上がり、それに伴い暗黒物質対消滅率も上がることに注目し、宇宙背景放射への影響を考慮することで小スケールの揺らぎの大きさに上限を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体物理と素粒子物理の境界領域に踏み込み、新たな研究分野への足掛かりを得た。特に暗黒物質検出への応用を考察した。初期宇宙の研究においても、再加熱の物理の理解に新たな進展があった。それらに加え、暗黒物質の生成機構や対消滅断面積に対する制限など、これまでの研究を順調に発展させた。
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今後の研究の推進方策 |
暗黒物質や新粒子の検出を念頭におき、固体物理と素粒子物理の境界領域の研究をさらに進展させる。同時に、インフレーションと再加熱期における粒子生成といった初期宇宙物理の研究を推し進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
引き続きコロナ禍にあり、出張を控えた。状況によるが、次年度は研究会参加のための旅費に使用することを考えている。
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