(1) インフレーション終了後、インフラトンが崩壊し熱い宇宙になる再加熱過程について調べた。インフラトンが重力子(グラビトン)へ崩壊するプロセスが存在することを指摘し、具体的な模型にもとづく崩壊率、分岐比などを求めた。さらに一般のスカラー場についても同様の解析を行い、このプロセスにより生じた高周波数の背景重力波観測により初期宇宙の物理に対して重要な情報が得られることを示した。(2) 1eV程度の質量の暗黒物質アクシオンは光子に崩壊することにより、可視光・赤外背景放射に寄与することが知られている。我々は、ハッブル宇宙望遠鏡による可視光・赤外背景放射の非等方性の観測データが、この質量領域においてアクシオン光子結合定数に対して最も強い制限を与えることを示した。また、この制限により、最近報告されたNew Horizon衛星のLORRI検出器による可視光背景放射の超過成分が、アクシオン暗黒物質では説明できないことを示した。(3) スタロビンスキーインフレーション模型における再加熱時期での電弱真空不安定性について、格子計算による詳細な解析を行った。真空の崩壊を避けるためには、通常のインフレーション模型に比べて、曲率との結合定数に対する制限が1桁程度厳しくなることが示された。研究期間全体を通して、インフレーションと再加熱の物理に関して大きな進展があった。中でも、重力的粒子生成に関する一連の研究は、その後の大きな潮流を生み出すきっかけになった。
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