研究課題/領域番号 |
18K03610
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松尾 泰 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50202320)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 双対性 / q変形 / 表現論 / 位相的ストリング / 行列模型 / コセット空間 / 可解理論 |
研究実績の概要 |
(1)無限次元代数の一般化とその行列模型への応用:双対性を記述する量子トロイダル代数を一般化し一般次元のトーラスを記述するn-loop代数、さらにより一般の空間であるコセット空間を記述する無限次元代数を提案した。構成の基本としては、考えている空間の関数全体を表す代数にリー微分に相当する元とその双対元を加え、不変な内積を与えたものを考える。その応用として対応する行列模型を考察し、次元酸化によりコセット空間上のゲージ理論が構成できることをあからさまに示した。 (2)GaiottoとRapcakにより提案されたcorner vertex operator algebra(CVOA)はアファインヤンギアン代数のパラメーターにある種の条件を置くことにより実現できることが知られている。この代数の自由ボソンを用いた実現としてProchazkaとRapcakは三浦変換の一般化を提案したがその構成がなぜ有効なのかはよく理解されていなかった。これを動機づけとして、私たちはCVOAのq変形版を考察した。この場合は量子トロイダル代数のパラメータに制限を加えたものとして実現することができる。これまで数学で知られていた結果を応用し対応する三浦変換を構成した。これはProchazka-Rapcakの結果をq-変形したものに相当するが、量子トロイダル代数の双対性を用いるとDrinfeldカレントとの対応が非常に見やすくなることを示した。これによりCVOAの三浦変換の直接的な解釈が得られることができた。CVOAはそれを組み合わせることによりWeb of W代数に拡張できることが知られているが、我々の結果はその自由場表示が可能であることを示すものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究の目標は双対性をあからさまに含む代数の表現論の構築によりストリング理論のコンパクト化やゲージ理論の双対性を数学的な厳密性を保ちつつ示すことにある。この意味で一般のコセット空間を記述する対称性を発見できたことは大きな進歩であったと考えている。また、CVOAはカラビヤウコンパクト化の記述において基本的な役割を果たすものであり、その自由場表示とトロイダル代数の対応関係を明らかにしたことは今後の発展の基礎構築という意味で重要なステップを踏んだといえる。
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今後の研究の推進方策 |
この分野にはこれまでブレーンに関する双対性を幾何学的に考察してきた数理物理学のグループが新規参入してきており、本質的な寄与を行うようになってきている。その中で位相的ストリング理論の観点からトロイダル代数の拡張の提案がなされている。今年のCVOAの研究を用いてこれらの拡張された代数の自由場表示を得ることは一つの大きな目標になっている。また、コセット空間に対応する拡張された代数に内在すると思われる非可換双対性の研究を行い、ストリング理論への応用を行いたいと考えている。
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