トロイダル代数は弦理論の双対性に対応する対称性(dualityやtriality)を代数構造の中に非自明な形に含んでおり、その点を明らかにするための研究を遂行した。まず、トロイダル代数とよく知られているVirasoro代数の間の対応関係を解明するため、極小模型と呼ばれる代数のみで物理系の性質が決まる代数の表現について平面分割と呼ばれる3次元のヤング図との対応関係を明らかにした。trialityは3次元の軸をどちらに取るかという選択に対応し図形的な理解を可能とした。また、Web of W代数と呼ばれる平面分割をつなげて得られる代数についても極小模型の図形的解釈が可能であることを示した。 他にも、dualityを理解する方法の一つとして自由フェルミオンで記述可能な模型について解析し双対性と基底の対応関係を明らかにした。また、trialityをあからさまな対称性として持つcorner vertex operator algebraの自由場表示についてq-変形を含む場合への拡張、トロイダル代数を一般化するコセット代数の提案とその対称性を持つ場の理論の構築、新しいCalogero模型の提案とその非可換ホール効果への物理的応用などを求めた。最後のものは新たなトロイダル代数を与えるものと期待されている。 最終年度にはこれまでの研究をまとめた200ページ余りのレビュー論文を執筆した。今回の研究課題については世界的にこれまで適当なレビュー論文がなかったので、今後の分野の発展に向けて大きな寄与を与えるものと考えている。
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