研究課題/領域番号 |
18K03611
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹内 道久 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 准教授 (60749464)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 素粒子現象論 / トップクオーク / 暗黒物質 / LHCにおける新物理探索 / ジェット / トップパートナー / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、ヒッグス粒子等の性質測定を足がかりに、背後にある素粒子標準模型を超える新物理に、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)実験でのデータを最大限活用して迫ることである。
2019年度は、3本の論文を発表した。うち、2つではミューオンg-2に見られる標準模型とのずれを説明するため、レプトンフレーバーの破れを持つ2つのヒッグス2重項を持つ模型を考え、LHC実験や、Belle 2実験における検証方法の提案を行なった。LHC実験では、特徴的なHA→(τμ)(τμ)事象がシグナルとして予言され、同符号ミューオン、同符号タウを含む4レプトン事象を用いることで、現在既に検証可能なことを示した。Belle 2実験では、このような新粒子Xが非常に軽い(1-10GeV)場合、τμX生成から4レプトン事象が同様に予言され、探索可能であることを示した。 もう1つの論文では、トップジェットとQCDジェットを分類する方法として、少数の観測量を入力とした通常のニューラルネット(NN)を使う方法と、画像解析の分野で実績のあるCNN (Convolutional Neural Network)を使う方法の2種類を比較し、分類性能の比較や、重要な特徴量について議論した。摂動QCDの分岐関数から示唆される2点エネルギー相関に加え、ジェット内のエネルギー分布を表す非摂動的変数をNNの入力に追加することで、CNNの場合と近い性能が実現できることを示した。
素粒子現象論全般をテーマとした国際研究会「Asian-European Institutes for BSM」を主催者の一員として韓国で共催した。また、LHC実験での機械学習の応用に関する研究会を名古屋大学で主催し、世界的に活躍する10人程度の研究者を招聘し、研究活動の活性化に貢献した。また、数々の国際・国内会議に参加し、上記研究成果の発表・周知を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた、ISR(initial state radiation)ジェット情報を使ってトップパートナーの性質を同定する研究については、先に機械学習を用いたトップジェットとQCDジェットの比較研究をまとめたため、一旦保留となっているが、2019年度の結果を利用して進めていきたいと考えている。また、トップパートナーのco-annhihilationプロセスを含めた、暗黒物質残存量とコライダーシグナルの関係についての研究についても進展があったが、論文としてまとめるためには、多数の計算結果を集計する必要があるため、もう少し時間がかかる見込みである。 一方、研究を拡張したいと考えていた方向である、機械学習を利用したジェット同定の研究については、1つまとめることができ、更に、LHCにおける機械学習の応用に関する研究会を主催することもでき一定の成果をあげることができたと考えている。また、今年も、招待講演等の依頼を受けて、研究成果発表を多数行なうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初から計画していた、ISRジェット情報を使ってトップパートナーの性質を同定する研究については、機械学習を用いたトップジェットとQCDジェットの比較研究で得た知見を応用して、具体的に結果をまとめたいと考えている。 トップパートナーと暗黒物質の関係についての研究についても、元となる結果はほぼ計算が終わっているので、海外の共同研究者と時間を調整して、できるだけ早く論文としてまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究会開催のための招聘旅費を当初確保していたが、所属機関の研究会補助予算が利用できたため、そちらから補填することができた。また、コロナウイルスの影響により、招待講演者のキャンセル、日程の短縮があり、当初計画より、経費が少なくなった。また、自身も当初研究発表を予定していた旅行を一部、キャンセル・延期するなどした。
研究成果発表のための出張旅費、学生の研究発表のための旅費の補助、共同研究者の招聘、あるいは、こちらから出向くための旅費、研究会開催を行なう際の追加の招聘旅費、等に利用する計画である。
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