研究課題/領域番号 |
18K03611
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹内 道久 大阪大学, 理学研究科, 特任助教(常勤) (60749464)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 素粒子 / トップクオーク / ヒッグス / ボトムフレーバー / レプトンフレーバー / LHCにおける新物理探索 / ジェット |
研究実績の概要 |
本研究の目標の一つは、ヒッグス粒子の性質測定を足がかりとして、背後の素粒子標準模型を超える新物理の正体に迫ることである。特に、トップパートナー粒子が存在する場合に当初注目して研究を行ない、結果として導かれる、第3世代のフレーバーの物理と関連する現象についての研究を行なった。
具体的には、前年度に引き続き、ボトムフレーバーの測定B→D(*)lνに見られる標準模型からのずれを説明できるような模型について研究を行なった。特に、様々なレプトクオーク模型と、有効場のEFT理論を用いる場合を比較し、後者の場合にはLHC実験による制限が強く推定されすぎる傾向にあることを示した。また、具体的にLHC実験における、タウ粒子と見えない横運動量シグナルを持つシグナル探索において、ボトムジェットの存在を追加して解析することで、様々な模型間の選別可能性が高くなることを示した。これらの成果により2編の論文を発表した。
また、バリオン数生成シナリオには、新しいCPの破れの元が必要となるが、その破れがヒッグスセクターにあるケースに注目し、Aligned 2HDM シナリオと呼ばれる2つのヒッグス二重項を持つ模型について詳細に検討した。特に、現在のLHC実験でのレプトンイベント探索の結果が、この模型に対して既にかなり強い制限を与えていることを示した。更に、棄却されず残るパラメータ領域では、bbττ探索モードが重要となることを示し、いくつかのベンチマークシナリオにおいて、重いヒッグス粒子の質量がある程度軽ければ、HL-LHCで得られる予定のデータを用いて決定できることを示した。さらに、レプトンフレーバーの破れの検証の場として、レプトン核子散乱実験を利用する研究についても、研究を進展させ、1本の論文として成果をまとめ発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ボトムフレーバー実験の測定に見られるずれを検証する方法を提案する研究、レプトンフレーバーの破れの検証法についての研究、CPの破れを伴うヒッグス二重項を二つ含む模型の研究、それぞれ全ての研究について、論文にまとめて成果を公表できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
ボトムフレーバーに関する研究については、さらに模型の選別が可能となる解析方法の提案を行なって行く。レプトンフレーバーの破れをレプトン核子散乱実験において検証する研究に関しては、他の低エネルギーレプトンフレーバー実験の結果との相関について含めた研究を行なう。CPの破れを伴うヒッグス二重項を二つ含む模型に関しては、レプトンと新しいヒッグス粒子とのCP位相を、実験的な制約の元でどの程度決定可能かについての検討を行なっていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の蔓延による国際会議発表の延期と国外の共同研究者の招聘計画の延期のため、外国旅費の執行等が行えなかったため、次年度使用額が生じた。次年度に国際会議発表と、共同研究者の招聘を行う計画であり、その経費として利用する計画である。
|