研究課題/領域番号 |
18K03615
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
野尻 伸一 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (00432229)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 拡張重力理論 / 暗黒エネルギー / インフレーション |
研究実績の概要 |
現在の宇宙の加速膨張や宇宙初期のインフレーションを説明するために様々な模型を考え、その観測による検証について考察した。新たに考えた模型として F(G) 重力模型にラグランジェ乗数場を導入したものがある。F(G)重力理論はアインシュタイン重力理論にガウス=ボンネ不変量であるGの関数を加えたもので、現実の膨張をよく再現するが、ゴーストというものが現れ理論的には矛盾する模型であった。我々はラグランジェ乗数場を導入することでゴーストを取り除き矛盾のない模型が得られるとともに、観測とも矛盾のない模型が作れることを示した。 また、スカラー場の高階微分を持つ模型とF(R)重力理論を合わせた模型を提案し、インフレーションについて議論した。F(R)重力単独では現実と矛盾していたモデルもスカラー場の高階微分項を含めることで、観測と矛盾のない模型が得られることが分かった。また、再構築の方法によって模型を構成し、インフレーションの観測量を計算し、観測と矛盾のないことを示している。またこの模型では一般にゴーストが現れるが、それが現れない条件を求めた。 宇宙にある物質の集団において宇宙膨張によって生じる潮汐力と重力が釣り合う展開半径というものがあり、これが宇宙の大規模構造のスケールを決める重要なパラメーターとなっている。この展開半径を拡張重力理論で求め、模型に対する観測的な制限を求めた。 また、いわゆるツァリス統計と拡張重力理論の関係を考察し、その統計性から加速膨張が起こりうることを示し、観測と矛盾のない模型を構成した。 その他、宇宙項の量子的な問題を解決するために位相的場の理論の模型を考察したほか、様々な媒質中での重力波の伝播を研究している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画では、拡張重力理論のうちどの理論が現実の宇宙を記述する理論になっているかを検証するために、拡張重力に現れるスカラー粒子が暗黒物質となる可能性からの検証、重力波の伝播の違いによる検証、宇宙の大規模構造形成による検証、を上げている。暗黒物質としての検証については私の元学生で現在中国で研究をしている桂川大志氏及びその学生らと議論を続けている。また、重力波の伝播に関する研究はノルウェーの研究者であるIver Brevik氏と共同研究を行い、粘性流体が加速膨張を引き起こすシナリオに基づき、粘性流体中で伝播することにより重力波が強められる可能性を示し、論文として投稿中である。また、宇宙の大規模構造の非摂動論的研究については上記のように転回点を使った研究を行った。また、加速膨張について新たの模型の可能性などを示しており、当初の計画以上に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に引き続き、拡張重力理論について、拡張重力に現れるスカラー粒子が暗黒物質となる可能性からの検証、重力波の伝播の違いによる検証、宇宙の大規模構造形成による検証を行う。暗黒物質についてはF(R)重力以外の拡張重力理論についても考察を行う。重力波の伝播についてはこれまでにスカラー・テンソル理論、F(R)重力理論、粘性流体理論について調べてきたが、他の様々な模型における伝播についても明らかにする。宇宙の大規模構造の非摂動論的研究についても繰り込み群的な手法を取り入れる。これらの知見から、アインシュタイン重力理論の背後にある量子論との整合性を持つ重力理論についての手掛かりを得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に比べ、次年度に、国内外へ出張し、共同研究や学会発表、資料収集の機会が増えると判断したため、次年度に助成金を繰り越し、国内外への出張に必要な経費の一部とする。
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