前年度に引き続き、アインシュタイン重力を拡張した様々な模型について、その検証の可能性について調べた。特に2021年度は、これらの模型に特有なブラックホール解の性質の解明、特に熱力学的性質の解明を行った。この熱力学的性質が宇宙論に与える影響についても調べた。また、近年及び今後の重力波観測から中性子星の性質が明らかになろうとしており、この中性子星の性質に対する修正重力理論の影響を研究した。また、近年Hubble tension と呼ばれる問題が多くの研究者の注目を集めており、この問題を修正重力理論から解決することを模索した。その結果2021年度に学術雑誌から出版された論文は15編に上り、さらに3編の論文が投稿中である。 拡張重力理論にはアインシュタイン重力には現れ特有のブラックホール解が存在する。今年度は F(R) 重力理論と呼ばれる理論等で、電荷や回転を伴うブラックホール解を構成しその性質や理論的な整合性を調べた。また、拡張重力理論におけるブラックホールの熱力学的な性質について調べ、その性質を宇宙論に応用するとともに、いわゆるホログラフィック模型と呼ばれるものとの関係をつけた。 Hubble tension の問題とは、宇宙の膨張率を表すハッブル定数について、ΛCDM 模型という標準的な宇宙模型を仮定し、観測衛星Planck によって得られた宇宙背景輻射の異方性についての測定データからから求めた値と、年周視差、セファイド変光星、および Ia型超新星から得られたデータを組み合わせて求めた値が有意に(4σ以上)異なるというものである。これについてはセファイド変光星の観測等に不定性があるのではないかというような指摘もあるが、重力理論の拡張等でインフレーション後にも短い加速膨張が生じさせることによって説明できる可能性があり、後者のシナリオを実現する模型を構築した。
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