研究課題
本年度は昨年度に引き続き研究計画に掲げた初期3次元密度揺らぎの再構築の方法として、遠方銀河団を通過してくるCMB光子の偏光の情報を用いる研究を遂行した。CMB光子は散乱する自由電子からみた宇宙のCMB温度揺らぎの四重極によって偏光する。従って、多くの遠方銀河団からの偏光を観測することにより、我々の光円錐の内側を含む、宇宙の様々な場所における大スケールの3次元的な揺らぎを推定することが可能となる。揺らぎの推定を行うために、揺らぎを生成し、その揺らぎから期待される銀河団でのストークスパラメータを予言し、さらにそのストークスパラメタから逆問題として揺らぎを推定する、というアルゴリズムを実装した数値計算コードを開発した。次に、開発した計算コードを実行することにより、暗黒エネルギーの状態方程式パラメータが将来の銀河団CMB偏光を測ることでどれくらいの精度で求めることができるかどうかについて調べた。その結果、研究目的にある通り揺らぎの分散の推定ではなく、揺らぎの時間進化を直接測ることができることから、これまでのCMB観測から得られている暗黒エネルギーに関する制限を大幅に改善できることが明らかになった。その内容を学術論文としてまとめ、physical Review D誌に出版した。また、国内で行われた研究会にて本研究内容についての招待講演を一件行った。一方、先行研究にあった揺らぎの分散を推定する従来の方法についても再検証を行ったところ、先行研究におけるコスミックバリアンスの取扱い方に誤りをみつけ、従来の方法では制限が全くつかなくなることも明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
計画していた研究成果があがり、学術論文として出版することができ、概ね順調に進展しているといえる。
本年度は暗黒エネルギーの状態方程式に限って解析を行った。今後は、他の宇宙論パラメータとの縮退や、決定精度の銀河団の赤方偏移分布や観測ノイズへの依存性などを調べていく予定である。
主に計画していた海外出張が実施できなかったため、次年度使用額が生じた。そのため本年度に海外旅費として主に使用する予定。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)
Physical Review D
巻: 105 ページ: d.063507
10.1103/PhysRevD.105.063507
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: Advance access ページ: Advance access
10.1093/pasj/psab119
The Astronomical Journal
巻: 163 ページ: id.63, 27 pp.
10.3847/1538-3881/ac397b