研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、安定原子核、不安定原子核の低エネルギー励起モードの理論研究を進めた。特に、酸素同位体やMg同位体などsd-shell核の励起モードに焦点をあて、反対称化分子動力学法やそれを拡張した微視的構造計算を用いて低エネルギーの励起状態の構造の詳細を調べた。これらの原子核のdensityおよびtransition density計算し、励起モードの特徴を解析し、アイソスピンモードの特徴を解明した。さらに、得られたdensityをinputにして、微視的な反応計算を行い、陽子非弾性散乱、α非弾性散乱の計算を系統的に行った。微視的反応計算では、Melbourne g matrixを用いたcoupled-channel反応計算を用い、多様な原子核の(p,p'), (alpha,alpha')散乱に適用し、観測された断面積が見事に再現できることを確認した。回転体などのバンド構造を同定する上で、proton, alpha非弾性散乱の断面積データが非常に有効であることを確認し、基底回転帯だけでなく、side bandやnegative-parity bandの決定に初めて成功した。 酸素同位体では低エネルギーに出現する双極子モードの研究を行った。18O,20Oには2つの低エネルギー双極子モードが出現するという結果が得られた。それらの励起状態には、クラスター構造に起因した変形と余剰中性子が重要な役割を果たすことを明らかにした。渦型の励起モードが16O,18O,20Oで系統的に出現するという理論的予言を行った。 微視的な理論手法に基づいた研究により、原子核励起状態の構造を詳細に記述するだけでなく、非弾性散乱のデータと直接対応づけて実験的検証を行うことにより新しい知見が得られる点は特筆すべき成果である。
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