安定原子核、不安定原子核の低エネルギー励起モードを理論的に解明するために、新しい解析方法を開発した。中性子過剰な酸素同位体については、特に双極子励起モードにおけるアイソスピンの特徴に焦点をあてて解析を行った。理論手法として反対称化分子動力学法を用いて低エネルギーの双極子励起状態を計算した結果、角運動量の変形軸成分によって励起モードが分類できることがわかっている。余剰中性子の役割と、芯原子核からの励起への寄与を分離するために、陽子と中性子を同時にパリティ反転させた状態と、陽子だけをパリティ反転させた状態を用意し、それぞれの状態の寄与と状態混合を調べた。エネルギーの低い負パリティ状態は、陽子励起が主要な寄与を与えているという結果が得られ、中性子励起よりもむしろ、芯部分の励起によって引き起こされていることを示している。この励起モードの性質は、安定核16Oの励起状態と類似したものである。 さらに、中性子過剰なBe同位体の励起状態を調べた。特に12Beにおいて異なる性質をもつ内部状態の回転帯(バンド)が共存しているという興味深い現象が明らかになった。回転の角運動量の増加とともに2つのバンドの混ざりが強くなる様相が見られ、その混合率を非弾性散乱の断面積の大きさによって評価できるという理論結果を得た。この結果は、今後の観測実験計画の提案に密接に結びつく重要な成果である。 核表面のαクラスターの存在確率を調べるためにαノックアウト反応の実験解析と理論計算を比較した共同研究を進めた。αクラスターだけでなく3Hクラスターの存在確率についても研究を発展させる方針で進めており、3Heクラスターの確率の理論値を提供した。
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