研究課題/領域番号 |
18K03619
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
飯塚 則裕 大阪大学, 理学研究科, 助教 (40645462)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ブラックホール / 量子重力 / 超弦理論 |
研究実績の概要 |
*Black holeのPage curveを再現するislandの出現の論文をJHEPに出版した。この2本の論文の研究は量子ブラックホールの情報損失の鍵となる問いである、ブラックホールの蒸発後に状態がどのように純粋状態にもどるか?についての研究であり、状態の密度行列から得られるvon Neumannエントロピーが時間とともにどう発展するかを解析する研究である。両論文の結果は、ブラックホールの時間発展は、漸近的平坦な時空であっても、量子論のユニタリー性と無矛盾であることを示唆している。前者は大阪大学の姉川尊徳氏、後者は大阪大学の橋本幸士氏、松尾善典氏との共同研究である。
*どのような場の理論が重力双対を持つかは長年の重要な問題である。本問題に対し、近畿大学の石橋明浩氏、芝浦工科大学の前田健吾氏とともに、重力双対を持つ場の理論がどの様なエネルギー条件を満たさなければいけないかを、双対な重力理論の因果律から調べた結果、ストレステンソルのnull方向の積分値が正でなければならないことが、重力双対の因果律から示された。
*ER=EPR予想によると、量子もつれはワームホールと双対である。では量子もつれがほころぶとき、ワームホールは切れてしまうのではないかと考えるのが自然である。しかしどのようにワームホールが時間発展し、きれるのかは未解決問題だった。本研究では、京都大学の宇賀神知紀氏と玉岡幸太郎氏と大阪大学の姉川尊徳氏とともに、3次元で、出口が複数個あるワームホール解を構成し、かつその複数の出口のうち、量子もつれのほころびがどの出口間の通行を遮断しワームホールが切断されるかについて解析した。結果、量子もつれのほころびと、ワームホールの切断は完全に対応していることがわかった。これは上述のER=EPR予想をよりサポートする結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度に続いて、island prescriptionを用い、重力側からどのようにユニタリー的なPage曲線を導くかの研究を続けた。
さらにエネルギー条件について偶数次元、奇数次元、および量子anomalyを含んだ効果を取り入れてエネルギー条件を特定することができた。
さらにワームホールと量子もつれの双対性について時空の発展から知見をえることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、entanglement、量子情報を鍵として、時空の量子論に迫る研究を推し進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた最大の理由は、コロナウィルスのため、全ての海外での研究会参加や海外出張、および共同研究者の招聘が不可能になり、旅費や人件費として使用計画を立てていた費用がすべて使用できなくなったためである。またコロナウィルスの拡大によりオンラインでの研究会や共同研究がより一層必要になったため、設備(ipadやパソコン)への費用が予想より多くなった。
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