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2023 年度 実施状況報告書

ゲージ重力対応による、創発する時空とブラックホールの構造解明研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K03619
研究機関大阪大学

研究代表者

飯塚 則裕  大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (40645462)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2025-03-31
キーワードブラックホール / カオス / 行列模型
研究実績の概要

量子ブラックホールの解析を行うにあたり、ゲージ重力対応を用いて、ブラックホールの特性をlarge Nゲージ理論から行う。重力理論の非摂動に定義を我々は知らないが、large N ゲージ理論は非摂動に定義することが可能なので、large Nゲージ理論の特性からブラックホールの物理を読み解く。

研究代表が昔提案したゲージ理論のトイモデルであるIP行列模型は、随伴表現、すなわち行列成分をもつ調和振動子と基本表現、すなわちベクトル成分をもつ調和振動子からなる単純なlarge Nの量子力学模型であるにもかかわらず、高温度で熱化と情報損失というAdSブラックホールの重要な徴候を示す。このことから、IPモデルはAdSブラックホールのlarge N ゲージ理論のトイモデルであるとも言える。このモデルに近年その理解が進んでいる、Krylov複雑性の概念を応用した研究を行った。Krylov複雑性は、量子力学系の演算子がどのぐらい早くHilbert空間内で広がっていくかを表す一つの指標である。ブラックホールはあらゆる演算子が非常に早く広がっていくカオス的な状態だと考えられている。解析の結果、IPモデルでのKrylov複雑度は指数関数的に増大することが明らかになった。現在知られている限りにおいて、Krylov複雑性の指数関数的増加をlarge Nゲージ理論、あるいは行列の量子力学系で具体的に導出した結果は、世界初である。これらはIPモデルが十分に高温の領域で、ブラックホールと同じくカオス的であることを示している。同時にKrylov複雑性の指数増加は、IPモデルのスペクトラムが連続的になる温度で生じ、スペクトラムが離散的な温度ではKrylov複雑性は指数増加しない。このことからKrylov複雑性が閉じ込め/非閉じ込めのオーダーパラメータであることを示唆する。

これに加えて、de Stter時空の量子複雑性の解析、SYKモデルとsparseランダム行列の解析の成果がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

近年発展したKrylov複雑性を行列模型に適用でき、Krylov複雑性が指数増加するのを具体的に示すことができたのは非常に満足できる進展であった。さらに言うならば、具体的な量子力学系でKrylov複雑性が指数増加するのを示したのは世界初である。同時にKrylov複雑性の指数増加は、IPモデルのスペクトラムが連続的になる温度で生じ、スペクトラムが離散的な温度ではKrylov複雑性は指数増加しない。このことからKrylov複雑性が閉じ込め/非閉じ込めのオーダーパラメータであることを解析した論文を雑誌に投稿中である。同時に非時間順序相関関数というカオスの昔から知られているオーダーパラメーターも数値的に計算して論文に投稿中である。

今後の研究の推進方策

本課題の総仕上げとして、上述の論文を仕上げると共に、ブラックホールとKrylov複雑性、閉じ込め/非閉じ込め相転移の対応をより明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

IP行列模型の研究とカオスとブラックホールの関連性を解き明かす研究を本年度で完成させる予定だったが、非時間順序相関関数(out-of-time-ordered correlators)を計算するにあたり、数値計算の必要性が生じ、結果、研究に若干の遅延が生じた。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] 浦項工科大学(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      浦項工科大学
  • [国際共同研究] TIFR(インド)

    • 国名
      インド
    • 外国機関名
      TIFR
  • [雑誌論文] Krylov complexity in the IP matrix model2023

    • 著者名/発表者名
      Iizuka Norihiro、Nishida Mitsuhiro
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 2023 ページ: 065

    • DOI

      10.1007/JHEP11(2023)065

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Krylov complexity in the IP matrix model. Part II2023

    • 著者名/発表者名
      Iizuka Norihiro、Nishida Mitsuhiro
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 2023 ページ: 096

    • DOI

      10.1007/JHEP11(2023)096

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Late time behavior of n-point spectral form factors in Airy and JT gravities2023

    • 著者名/発表者名
      Anegawa Takanori、Iizuka Norihiro、Okuyama Kazumi、Sakai Kazuhiro
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 2023 ページ: 047

    • DOI

      10.1007/JHEP07(2023)047

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Is action complexity better for de Sitter space in Jackiw-Teitelboim gravity?2023

    • 著者名/発表者名
      Anegawa Takanori、Iizuka Norihiro、Sake Sunil Kumar、Zenoni Nicolo
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 2023 ページ: 213

    • DOI

      10.1007/JHEP06(2023)213

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Shock waves and delay of hyperfast growth in de Sitter complexity2023

    • 著者名/発表者名
      Anegawa Takanori、Iizuka Norihiro
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 2023 ページ: 115

    • DOI

      10.1007/JHEP08(2023)115

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Sparse random matrices and Gaussian ensembles with varying randomness2023

    • 著者名/発表者名
      Anegawa Takanori、Iizuka Norihiro、Mukherjee Arkaprava、Sake Sunil Kumar、Trivedi Sandip P.
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 2023 ページ: 234

    • DOI

      10.1007/JHEP11(2023)234

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] The local SYK model and its triple-scaling limit2023

    • 著者名/発表者名
      Anegawa Takanori、Iizuka Norihiro、Sake Sunil Kumar
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 2023 ページ: 160

    • DOI

      10.1007/JHEP10(2023)160

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Krylov complexity in the IP matrix model2023

    • 著者名/発表者名
      Norihiro Iizuka
    • 学会等名
      14th Taiwan String Workshop 2023, Taiwan
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Krylov complexity in the IP matrix model2023

    • 著者名/発表者名
      Norihiro Iizuka
    • 学会等名
      Quantum Black holes, Quantum Information and Quantum Strings, APCTP workshop, Korea
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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