研究課題/領域番号 |
18K03625
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
杉山 弘晃 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50548724)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニュートリノ質量 / レプトンフレーバーの破れ |
研究実績の概要 |
荷電レプトン等とは異なり、ニュートリノはマヨラナ型の質量項を持つ可能性がある。その場合はレプトン数が非保存量となり、例えばニュートリノを伴わない2重ベータ崩壊が観測されれば確認できる。一方、レプトン数を保存させたままニュートリノが質量を持つことも可能であるが、それをどのように確認できるかは自明ではない。 本年度の研究では、レプトン数を保存させたまま微小なニュートリノ質量を生成させる新物理模型を構築した。この模型では、ニュートリノ質量は2ループの量子補正として現われ、その補正には暗黒物質候補となる新粒子が関与する。模型に含まれる新粒子はレプトンフレーバー非保存過程に寄与するが、ヒッグス粒子のレプトンフレーバー非保存崩壊率に比べて荷電レプトンのレプトンフレーバー非保存崩壊率を格段に抑制することが原理的に可能になっている。実際、ニュートリノ振動実験・暗黒物質探索・荷電レプトンの希崩壊探索等の制限を満たしつつ、そのような抑制を実現するパラメーター値を見つけ出すことができた。 構築した新物理模型はある種のシンプルな模型群に属しているが、上述のような抑制が原理的に可能なものは限られている。特に、その模型群に属するもののうちでマヨラナ型の質量を生成する新物理模型では不可能なことがわかっている。したがってそのような模型群に限定すると、荷電レプトンのレプトンフレーバー非保存崩壊が観測されないままヒッグス粒子のレプトンフレーバー非保存崩壊が観測されれば、ニュートリノ質量項はマヨラナ型ではないことが分かり、今回構築した模型は有力な候補の一つとして生き残る。そのような状況では、レプトン数は保存量である可能性が非常に高くなると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レプトン数が保存量であることを強く示唆可能な新物理模型を具体的に構築することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果と同様の方向性をさらに追求しつつ、レプトン数が非保存量である場合の研究も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
日程の都合がつかず参加できなかった研究会がいくつかあったため、次年度使用額が生じた。研究打ち合わせの旅費等に充てる予定である。
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