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2019 年度 実施状況報告書

修正重力理論における非線形ダイナミクスと超弦理論の検証

研究課題

研究課題/領域番号 18K03630
研究機関大阪工業大学

研究代表者

鳥居 隆  大阪工業大学, ロボティクス&デザイン工学部, 教授 (00360199)

研究分担者 真貝 寿明  大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (30267405)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード修正重力理論 / 高次元時空
研究実績の概要

本研究は修正重力理論として超弦理論から導出される高次曲率項を含んだ理論 (Gauss-Bonnet 重力理論および dilaton 場を含んだ理論)において,解析的および数値的手法を駆使して非線形ダイナミクスの一端を明らかにし,理論や時空次元による定性的・定量的違いを評価することを目的としている.そのために (A)モデルの定式化と数値コードの開発を行い,具体的な物理現象として (B)ブラックホールと時空特異点 (C)重力波伝播 (D)宇宙進化モデルを調べる.
2019年度(令和元年度)は前年度に定式化したdilaton場を含むGauss-Bonnet重力理論と,より一般化されたHorndeski理論のN+1分解(N+1次元時空を時間と空間方向に分離する定式化)を用いてコード開発 (A) を行った.dilaton場の導入により数値コードは非常に複雑になり,また,曲率高次項が持つ特異性のために特別なアルゴリズムが必要なことが明らかになった.試験を行いながらバグを取り除いている段階である. (B)についてはブラックホールの準固有振動と重力波の解析に着手し,マスター方程式やエコー現象などの理論モデルによる違いを調べ,現在も継続している.これにより将来的には重力波観測から重力理論を決定することが可能になる.また,平面波の衝突現象(C)とワームホール(B)の動的振る舞いの研究を前年度より継続して行い,ワームホールでは宇宙項を導入しても不安定性が成長することが確かめられた.
また,アウトリーチ活動の一環として,宇宙を題材にした教育,特にPBL(課題解決型学習)を大学の授業で実践し,その手法や現状などを論文としてまとめて報告した.また,共同研究者の真貝は日本の重力波KAGRAプロジェクトの科学部門の代表を継続して引き受けることになった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

曲率高次項やスカラー場の導入によって理論が非常に複雑になっているが,解析的な部分は概ね当初の予定どおりに研究が進んでいる.一方で,数値的な研究ではこの複雑さにより進捗状況としては少し遅れている.特にN+1分解を用いた解析のコード開発で,曲率高事項の特異性の取り扱いに時間が取られている.そのために異なる座標系である光伝播座標での数値コードの開発に手が着けられていない.複雑なモデルのために得られた数値計算の結果が正しいかはそれだけでは判定がつかず,異なる座標系を用いて同じ結果が出ることで初めてその正当性が確かめられる.そのためにも光伝播座標を用いた数値コードも早急に完成させなければならない.

今後の研究の推進方策

はじめにGauss-Bonnet項とdilaton場のモデルでN+1分解を用いた数値コードのチェックを行い,それをHorndeski理論へと発展させコードを完成する.また同時に光伝播座標を用いた数値コード開発を進め,簡単なシステムで同じ結果が得られることを確かめる.特に時空曲率が大きくなったり,dilaton場の変化が激しくなったりする領域での振る舞いに注視し,2つの計算で「ずれ」が出ないように調整していく.
その後,コードを用いて研究対象の物理現象を順次調べていく.特にブラックホールの準固有振動は近年の重力波観測と関係し,また,日本の重力波検出器KAGRAも始動したことから非常に重要な研究分野といえる.本研究課題の理論モデルも含めてどの拡張重力理論は正しい(生き残る)のか,または最も純粋な一般相対性理論が真の理論なのか明らかになる指標を示していく.
また,こうした研究の社会へのフィードバックとして,理科教育分野における発信を継続していく.PBL型授業の実践,その手法の開発と報告などがこれに対応する.

次年度使用額が生じた理由

年度末近くに新型コロナ感染症拡大防止のため,多くの関連する学会や研究会が中止となり,それらが次年度使用分に回っている.次年度はこの分を旅費,および解析のためにソフトウェア購入に用いる.

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 7件、 招待講演 4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Comparison of various methods to extract ringdown frequency from gravitational wave data2019

    • 著者名/発表者名
      H. Nakano, T. Narikawa, K. Oohara, K. Sakai, H. Shinkai, H. Takahashi, T. Tanaka, N. Uchikata, S. Yamamoto, T. S. Yamamoto
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 99 ページ: 124032

    • DOI

      https://doi.org/10.1103/PhysRevD.99.124032

    • 査読あり
  • [雑誌論文] First cryogenic test operation of underground km-scale gravitational-wave observatory KAGRA2019

    • 著者名/発表者名
      T. Akutsu, H. Shinkai, KAGRA collaboration
    • 雑誌名

      Classical Quantum Gravity

      巻: 36 ページ: 165008

    • DOI

      https://doi.org/10.1088/1361-6382/ab28a9

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 火星移住計画と太陽系ツアーをテーマにしたPBL型授業2019

    • 著者名/発表者名
      藤元 章, 三橋 雅子, 谷 保孝, 田中 淳, 小島 夏彦, 鳥居 隆
    • 雑誌名

      物理教育(物理教育学会

      巻: 67-4 ページ: 261-265

    • DOI

      https://doi.org/10.20653/pesj.67.4_261

    • 査読あり
  • [学会発表] Status of KAGRA2020

    • 著者名/発表者名
      H. Shinkai
    • 学会等名
      LIGO-Virgo-KAGRA collaboration meeting
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Introduction to Sparse Modeling2020

    • 著者名/発表者名
      H. Shinkai
    • 学会等名
      新学術領域研究「重力波物理学・天文学:創世記」A01グループ 研究会
  • [学会発表] 深層学習を用いた突発性ノイズの原因探索に関する研究2020

    • 著者名/発表者名
      上島元, 苔山圭以子, 小坂井千紘, 押野翔一, 高橋弘毅, 内山隆, 山本尚弘, 横澤孝章, KAGRA collaboration
    • 学会等名
      日本物理学会(春), 名古屋大学
  • [学会発表] Brief Introduction of KAGRA collaboration2019

    • 著者名/発表者名
      H. Shinkai
    • 学会等名
      The 6th KAGRA International Workshop, Wuhan, China
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Latest status of KAGRA2019

    • 著者名/発表者名
      H. Shinkai
    • 学会等名
      GR22, Amaldi13, Valencia, Spain
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Comparison of various methods to extract ringdown frequency from gravitational wave data2019

    • 著者名/発表者名
      H. Shinkai
    • 学会等名
      GR22, Amaldi13, Valencia, Spain
    • 国際学会
  • [学会発表] Status of KAGRA2019

    • 著者名/発表者名
      H. Shinkai
    • 学会等名
      LIGO-Virgo collaboration meeting, Warsaw, Poland
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Ring-down GW wave search using Auto-Regressive model2019

    • 著者名/発表者名
      H. Shinkai
    • 学会等名
      YITP long-term workshop "Multi-Messenger Astrophysics in the Gravitational Wave Era"
    • 国際学会
  • [学会発表] Ring-down waveform extraction by Auto-Regressive approach2019

    • 著者名/発表者名
      H. Shinkai
    • 学会等名
      Gravitational Wave Physics and Astronomy Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] 自己回帰モデルを用いた重力波データ解析(2):LIGO/Virgo O2までのカタログデータの解析2019

    • 著者名/発表者名
      真貝寿明
    • 学会等名
      日本物理学会(秋), 山形大学
  • [図書] 演習 相対性理論・重力理論2019

    • 著者名/発表者名
      A. Lightman他著,真貝寿明・鳥居隆訳
    • 総ページ数
      576
    • 出版者
      森北出版
    • ISBN
      978-4-627-15641-8

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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