研究課題
元素の起源の解明を目指した、爆発的天体現象における速中性子捕獲反応過程(r過程)における、核分裂に関連した理論計算を行った。原子核の性質を主対象として注目し、これまで十分に検討されていなかった、中性子過剰超重核領域における反応過程および崩壊過程について、特に核分裂を随伴した過程の計算を核図表上の広範な領域で行い、この領域の原子核崩壊がr過程元素合成にどのように影響するかを調べた。理論模型としては小浦-橘-宇野-山田(KTUY)原子核質量模型計算に用いた「球形基底の方法」を採用し、基底状態質量および核分裂障壁の計算を行った。ベータ崩壊に関しては「大局的理論」を用い、研究実施者が開発した計算コードを用いて計算した。最終年度の令和3年度は中性子過剰超重核領域における反応過程および崩壊過程のうち、β崩壊遅発中性子放出割合およびβ崩壊遅延核分裂割合の系統的計算を行った。β崩壊遅発中性子放出に関しては10個の中性子放出までを取り入れた計算を行い、質量数一定連鎖を破る崩壊過程を取り入れた、consistencyを考慮して広範囲の計算が可能とした結果を得て、原子核の核子数に関する偶奇効果を考慮した結果を得た。β崩壊遅発核分裂に関しては系統的な計算の結果、核図表上で1) Es-268付近、2)Sg-294から[126]-348付近の領域、3) [130]-390を中心とした領域に有意な確率を持つ領域が存在し、一方で、4)[126]-354を中心とした領域ではβ崩壊遅発核分裂が抑制される核種領域が存在することがわかった。1)は過去にも他の研究でも類似の指摘がされた領域であるが、2)-4)は今回の研究の結果新たに得た結論である。このような超重核領域のベータ崩壊および核分裂に関する定量的な計算はこれまでになく、今後のr過程元素合成研究に大きな影響を与えると期待できる。
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