交付申請書に従い量子論と対称性の関係を中心に研究した。核子ー反核子振動に関係した基礎的な側面の研究を行った。特に時間反転との兼ね合いの研究を行った。次に、量子異常とBerry 位相の関係に関しては、通常の理解であるBerry位相が量子異常に関係しているというのは多くの人たちの論文で議論されてきた研究であるが、全面的に誤りであることを数個の論文およびレビュー論文で明確にした。論拠は、Berry位相は量子力学の断熱近似に基づいているという事実である。これはBerryの最初の論文がまさしくこのような近似に基づいているという事実のみならず、Born-Oppenheimer近似でも同様な位相を導けるという事実でわかる。この問題は、多くの人たちが誤解に基づいて多くの論文を書いたのは、非常に残念な事実であり、量子異常の正確な理解を妨げまたBerry位相の正しい理解を損なった。 現在は、ニュートリノのMajorana 粒子としての理解に関して、ほとんどすべての教科書および論文で、いわゆる偽荷電共役の定義(Weinbergの論文で最初に使われた)に基づいていると考えられるが、この対称性を用いると最初に定義したMajorana 粒子の作用(ラグランジャン)がゼロになるという明確な矛盾に目を閉じているという重大な欠点を持っている。この欠点を明確に示す論文を現在準備中であり近く公表する予定である。ニュートリノの振動に関しては、基礎的な考察を行い、論文を書いた。これは、振動という現象は非常に深い量子論の本質と結びついているが、本質は非常に明快な2個の物理的な現象につながっており、時間の併進に関して不変であるというエネルギー保存則の基本に反しているように見える現象の理解に導く。
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