研究課題/領域番号 |
18K03635
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
堀内 渉 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (00612186)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 宇宙核物理 / 3体力 / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
我々の宇宙にある元素の合成過程において、恒星内での放射捕獲原子核反応や、超新星爆発におけるレプトン(電子、ニュートリノ等)原子核反応は決定的な役割を成すことが知られているが、反応率が極端に小さいため、実験による検出が難しく、系統的な反応率の評価は理論計算に頼らざるを得ない。本研究は原子核の外場による応答を第一原理的に求めることで、信頼のおける宇宙核反応率の評価を行う。核子(陽子・中性子)多体系である原子核の精度の良い記述には2核子力だけではなく3核子力の寄与が重要であるが、実験・理論研究の困難さから未だ大きな不定性が残されている。そこで模型を仮定しない一貫した枠組みにより、原子核構造・反応における3核子力の役割を明らかにし、信頼のおける宇宙核反応率を評価する枠組みを確立することが目的である。 本年度は特に真空中の炭素12の特殊な3アルファ状態の構造に関する研究をまとめ、査読付き学術雑誌に発表した。この研究は宇宙核反応で重要なトリプルアルファ反応に密接に関係しており、第一原理的アプローチにより状態に対する知見を得た。並行して中性子核媒質中におけるアルファ粒子系に関する研究をまとめた。これは中性子物質内におけるアルファ粒子系の安定性及び核反応率への寄与を議論したものある。今後多アルファクラスター系の構造計算の知見と合わせることで、核物質中のアルファ粒子の役割の理解が進むことが大いに期待される。また、高エネルギー陽子を用いた原子核反応を調べることで、宇宙核反応率の増大に寄与する原子核クラスター状態を判別する方法を提案するとともに、中性子添加による核構造変化を議論し、原子核の密度分布がどのように進化していくかを調べた。これらの研究業績は8編の査読付き誌上論文及び8件の国内外学術会合において発表され、宇宙核物理への興味や3体力の効果を根本に据えつつ、研究内容に広がりが出てきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
真空中の特殊な3アルファ状態および中性子物質中のアルファ粒子の安定性についての研究が進展した。それに並行して原子核密度に関する微視的な理解が進み、さらには陽子標的を用いた原子核散乱、応答によって原子核クラスター状態を判別する方法を確立した。これら一連の成果は全て査読付き誌上論文として出版されており、総合評価としておおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の主要テーマの一つである放射捕獲反応(原子核応答の逆反応)の微視的記述についての研究を進める。特に原子核クラスターの役割に着目し、宇宙環境中における3体力効果についての知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス蔓延の影響により、参加を予定していた学会がオンライン開催あるいは延期されたため次年度への繰り越しが生じた。次年度は国際学会が通常通り開催予定で、本助成金はそれらの参加旅費として使用する。
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