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2018 年度 実施状況報告書

数値シミュレーションに基づくアクシオン暗黒物質生成機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K03640
研究機関東京大学

研究代表者

関口 豊和  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (30584750)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード暗黒物質 / アクシオン / 宇宙紐 / 数値シミュレーション
研究実績の概要

アクシオン暗黒物質の主要な生成メカニズムの1つであるアクシオン宇宙紐について、そのダイナミクスを大規模数値シミュレーションに基づき解析し、その結果に基づきアクシオン暗黒物質生成量の見積もりへの影響を評価した。アクシオン宇宙紐は40年近くの研究がなされているが、そのダイナミクスは依然十分理解されてはいない。そのことが、宇宙紐から生成されるアクシオン暗黒物質量の予言、そして暗黒物質を説明するアクシオン質量の値に大きな理論的不定性を生んでいる。これは現在さまざまなアクシオン暗黒物質直接実験が進行・計画中な中で解決すべき喫緊の理論的課題である。
我々は場の理論に基づく第一原理計算によるアクシオン宇宙紐の数値シミュレーションを行い、アクシオン宇宙紐のダイナミクスを解析した。特に、4096^3のグリッド数のシミュレーションを大規模並列計算により実現することで、シミュレーション時間を過去の研究から8倍程度まで伸ばすことができた。また、グループ化に基づくループファインダーや宇宙紐速度の算出など新たなシミュレーションデータの解析手法を導入し、アクシオン宇宙紐のダイナミクスのより詳細な解析を可能にした。
我々は実際にシミュレーションを行い、アクシオン宇宙紐のホライズン体積あたりの本数がが時間の対数関数的に増えることを発見した。これはアクシオン宇宙紐のダイナミクスにこれまで知られていなかった長期ダイナミクスが存在すること、そしてアクシオン宇宙紐がスケーリング則に従うというこれまで広く信じられていたある種の神話が修正されることを意味する。我々の結果は、スケーリング則に基づき算出されていたアクシオン暗黒物質生成量が最大10倍程度増えることを意味し、そのため暗黒物質を説明するアクシオン質量が大きく変わることを示唆し、現在進行・計画中のアクシオン暗黒物質直接検出実験に対し重要な影響を与えるものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度においては、主に宇宙紐の数値シミュレーションコードを開発を行なった。OpenMP-MPIのハイブリッド並列計算により最大4096^3個のグリッド数で複素スカラー場の時間発展を効率的に行うコードを構築するとともに、ループファインダーや紐速度の見積もりなど新たな解析手法の導入を行なった。その上で、筑波大学計算科学センターの学際共同利用プロジェクトとして実計算を行い、特にアクシオン宇宙紐に時間の対数関数的な長期ダイナミクスが存在することを示し、この結果がアクシオン暗黒物質生成量の見積もりに与える影響を評価した。以上の進捗は当初の計画以上であり、順調な経過であると言える。

今後の研究の推進方策

本年度見つけた長期ダイナミクスの物理を解明することが最も重要な課題である。そのために、宇宙紐の標準モデルであるone-scaleモデルを、アクシオン宇宙紐に特徴的な長距離力やアクシオン放射などの過程を含むよう拡張し、シミュレーション結果へのフィットを試みる。その上で、フィットするために必要なアクシオン放射効率などのパラメータが実際に実現しているかどうか、アクシオン放射スペクトルなどシミュレーション内のデータとの比較やアクシオン宇宙紐の解析モデルであるKalb-Ramond作用に基づくモデリング、更には非宇宙論的なシングルループのシミュレーションとの比較など、複数の手法で検証し、アクシオン宇宙紐の長期ダイナミクスについて首尾一貫した描像を確立する。
アクシオン宇宙紐の描像を確立した後で、アクシオン宇宙紐のダイナミクスをシミュレーションでは到達できない量子色力学相転移の時刻まで外挿し、宇宙紐から生成されたアクシオン暗黒物質量の見積もり及びその不定性を評価する。
以上の宇宙紐の解析と同時並行に、量子色力学相転移後にできるアクシオンドメインウォールにシミュレーションを拡張し、そのダイナミクスと生成されるアクシオン暗黒物質量を見積もる。最終的には宇宙紐・ドメインウォール両方からのアクシオン暗黒物質生成量への寄与を見積もり、暗黒物質を説明するアクシオン質量を予言するとともに、そのような質量のアクシオンを検出する手法について、地上実験による直接検出、天文観測による間接検出双方の可能性を検討し、実験・観測への提言を行う。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していたインテルメニーコアアーキテクチャを用いたワークステーションが生産中止となっていたため異なる仕様のワークステーションを購入せざるを得なかった。仕様の変更を補うべく次年度GPUを導入する予定であり、本年度の残額をその購入費用に充てる予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Long-term dynamics of cosmological axion strings2018

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Kawasaki, Toyokazu Sekiguchi, Masahide Yamaguchi, Jun'ichi Yokoyama
    • 雑誌名

      Progress of Theoretical and Experimental Physics

      巻: 2018 ページ: 091E01

    • DOI

      10.1093/ptep/pty098

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Long-term dynamics of axion strings2018

    • 著者名/発表者名
      Toyokazu Sekiguchi
    • 学会等名
      JGRG28
    • 国際学会
  • [学会発表] Long-term dynamics in axion string networks2018

    • 著者名/発表者名
      Toyokazu Sekiguchi
    • 学会等名
      10th symposium on Discovery, Fusion, Creation of New Knowledge by Multidisciplinary Computational Sciences
    • 国際学会
  • [学会発表] Long-term dynamics of axion strings2018

    • 著者名/発表者名
      Toyokazu Sekiguchi
    • 学会等名
      RESCEU Summer School 2018
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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