研究課題/領域番号 |
18K03650
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松本 琢磨 九州大学, 理学研究院, 助教 (60415304)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 共鳴状態 / 分解過程 / 不安定原子核 |
研究実績の概要 |
共鳴状態は量子系に普遍に存在する非束縛な状態であり量子多体系の分野で注目されている。特に原子核では様々な核子相関の影響により多種多様な共鳴状態の存在が確認されている。さらに原子核の共鳴状態は天体での元素合成、中性子星の内部構造などにも深く関わることからも精力的に研究が進められている。近年では不安定領域における原子核の共鳴状態が注目されており、本年度は中性子過剰領域における不安定核の研究を進めてきた。以下にその成果をまとめる。 第1の成果として、6Heの第2励起状態として2+共鳴の研究を行った。この共鳴の存在は理論、実験ともに示唆されているが、崩壊幅が広くその詳細は未だ明らかになっていない。そこで本研究では、その共鳴状態が実験で観測される断面積へどのように影響するかを理論的に初めて明らかにした。こちらはPhysical Review Cに投稿し掲載決定された。 第2の成果は6Heの双極子共鳴の分布から6Heの基底状態の構造を調べる研究で、こちらは実験の研究者と共同で行った。この研究では双極子共鳴のエネルギー分布を理論的に導出し、その強度から6Heの基底状態での2中性子間の広がりの情報を導出した。こちらはPhysics Letter Bに投稿し掲載決定された。またこの研究に関連して、いくつかの不安定核に対する双極子共鳴分布のエネルギー依存性等の研究も行い、その成果はProgress of Theoretical and experimental Physicsに投稿中である。 第3の成果は多自由度を含む励起共鳴状態に対し、理論的に得られる断面積をその自由度に分離する方法を提案したもので、その有効性を理論的に示した。こちらはPhysics Review Cへ掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はコロナの影響で国際会議、国内会議のほとんどが延期、中止となった。そのためそのような会議での研究発表の機会は失ったが、論文としてこれまでの成果を通常より多くまとめることができた。またオンラインでの研究打ち合わせの機会が増え、数件の共同研究が並行して進められている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で軽い領域2中性子ハロー核である6He、11Li核についての研究を中心に進め、その共鳴状態についての知見を得た。現在の研究情勢として、比較的重い領域の不安定核の研究が注目されている。その中で2中性子ハロー核として候補に挙げられる原子核が14Be、17B、19B、22Cである。これらの原子核に対し比較的基底状態の情報は得られているが、励起共鳴状態に関してはまだ明らかではなく理論、実験の両面から進められている。今後はこのような比較的重い領域の原子核について研究を視野に入れて行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナの影響により予定していた国際会議、国内会議が中止延期になったことで、出張費として計上していた予算が不要になった。次年度はコロナの影響も収まると期待し、延期された研究会等への出張費として使用する予定である。
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