研究課題/領域番号 |
18K03651
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
下村 崇 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (00447278)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 軽いゲージ粒子 / ニュートリノ質量と混合 / ダークマター |
研究実績の概要 |
GeV以下の質量を持つ軽いゲージ粒子の理論的可能性と実験的検証可能性を研究した。
Atomki実験により報告されたBe原子核の内部転換崩壊の異常を、U(1)R対称性を持つ模型で説明し得る事を示した。この模型では電子-ニュートリノ散乱による重要な制限が右手型粒子のみが反応する対称性である程度抑制され、さらにヒッグス粒子のゲージチャージを適切に取る事で十分に抑制できる事を明らかにした。 また、U(1)R及びU(1)B-L対称性を持つ模型で、右手型ニュートリノが左手型ニュートリノとゲージ粒子に崩壊する時、暗黒物質の候補となり得る事を明らかにした。またその様なニュートリノが暗黒物質の直接探索実験でニュートリノの反応を見る事で探索できる事を示した。
来年度から始まるFASER実験において、暗黒光子の質量の起源となるスカラーを考慮に入れた解析を行った。スカラーが数GeV以下の場合にはスカラーから生成される暗黒光子の寄与により、中間子から直接生成される場合よりも広い領域を探索できる事を示した。またミュー粒子の異常磁気能率のずれを説明し得るLmu-Ltau模型を検証する目的で、ニュートリノ三重生成過程の分布を解析した。この研究により新たなゲージ粒子と結合定数に対してミュー粒子のエネルギーと不変質量の分布が感度がある事を明らかにした。一方で、もう少し質量の重い領域をLHC実験でどこまで探索できるかも調べた。ゲージ粒子が質量の起源となるスカラー粒子の崩壊によって作られる場合、数10GeV程度まで探索できる可能性がある事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響によりオンライン授業の準備が必要となり、その他にも学内業務が増加した事により研究時間を十分に確保できなかった。また、共同研究者との対面で研究打ち合わせが困難になった事により、研究が予定よりも進まなかった。以上の理由によりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度に実験が開始されるFASER実験での新物理の発見可能性を進める。まずは暗黒光子を含む軽いゲージ粒子の検証可能性に注力して研究を行う。その中で、すでに研究してきたように質量の起源となるスカラーも考慮に入れた解析を行う。また、ニュートリノの質量起源も同時に考え、レプトンフレーバーの破れをFASER実験でどこまで検証できるかを明らかにする。同時に、暗黒物質の候補となる粒子も同様に軽い場合を考え、その発見可能性を調べていく。 これらが終われば軽いスカラー粒子に対して同様の解析を行う。余力があれば軽いフェルミオンやアキシオン粒子についても解析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響により、予定していた研究会が開催できなかった。また、国内外の研究会や会議、共同研究者との研究打ち合わせを現地で行う事ができなかったため、その分の旅費を翌年度に繰り越す事となった。
繰り越し分は今年度の後半に予定している研究打ち合わせの出張に当てる予定である。
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