研究課題/領域番号 |
18K03655
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
倉知 昌史 慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター(日吉), 特任助教(非常勤) (00464206)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 暗黒物質 / 電弱スキルミオン / ヒッグスセクター |
研究実績の概要 |
本課題では、ウィークゲージボソンの4点結合の値が標準模型の値からずれていた場合、ヒッグス場が空間的に広がりを持った非自明な配位(電弱スキルミオン)を持つことができるという事実に注目し、それがこの宇宙をみたす暗黒物質の正体であるとするシナリオについて発展的な研究を行う。
電弱ゲージ場が存在しない場合に安定な電弱スキルミオンが存在しうることは研究代表者らによる先行研究で明らかにされていた。今年度は、電弱ゲージ場の存在が定性的にどのような影響をに関する詳細な調査を行なった。その結論として、ゲージ場が存在することにより起こるスファレロン過程を通じて電弱スキルミオンが崩壊する際に、クォークやレプトンといった通常の物質が生成されることを理論的に示した。また、スファレロン過程を通じて電弱スキルミオンと通常の物質が平衡状態になることから原理的に現在の暗黒物質と通常の物質の残存量の比が計算可能であることを指摘し、具体的な予言を行なった。その結果として、現在実験的に許されているウィークゲージボソンの4点結合の標準模型からのずれの範囲内に、現在の宇宙の暗黒物質と通常の物質の残存量の比を正しく再現する領域があることを示した。これの領域はまた、暗黒物質直接探索実験からの制限も見てしていることを示した。
この結果は物理学会秋季大会や、国際会議 "Higgs Coupling 2018" の招待講演等において発表した。また、多くの大学、国内研究機関からの招待を受け、研究内容に関するセミナーを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最も大切な部分である、理論にゲージ相互作用を導入した場合の定性的な振る舞いについて、研究計画段階で期待された通りの結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの定性的な研究により研究計画どおりに課題推進を行うことができることがわかったため、より定量的な理論解析や、実験との関係について詳細に調査する。
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