研究課題/領域番号 |
18K03658
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
船木 靖郎 関東学院大学, 理工学部, 准教授 (00435679)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | αクラスター / α凝縮 / クラスター模型 |
研究実績の概要 |
1. ``container''描像に基づいた微視的クラスター模型波動関数の拡張 軽い自己共役4n核の基底状態からクラスター構造を持った励起状態までを統一的に記述できる高い可能性を秘めたnα-THSR波動関数は、従来内部に正パリティ成分のみを含むものが考案され適用されてきた。この従来型THSR波動関数を、内部に負パリティ成分を含む形に拡張することに成功した。更に、12C核の励起状態に適用し、第一段階の計算結果を得た。特に角運動量・パリティが1^-の状態が、核半径が基底状態に比べ特に大きく、3つのαクラスターがガス的に配位した構造を持つことが示された。これはこの1^-状態が、α凝縮状態のファミリーであることを強く示唆する結果である。 2.クラスターガス状態に余剰核子が付加された系への``container''型模型波動関数の適用 2α-THSR波動関数を基にして、それに余剰核子が付加された形にTHSR波動関数を拡張し、9B(2α+p),10Be(2α+nn),10C(2α+pp)に適用した。従来型の模型は、余剰核子の運動として、パイ軌道に対応する運動に制限されたものが考案され適用されてきた。これに対し、新たにシグマ軌道に対応する運動を含むように拡張した。これは余剰核子の運動する``container''の空間位置を、2つのαクラスター間でシフトすることを可能にする形で実現したものである。この拡張による効果は大きく、全体として束縛エネルギーに1MeV以上のエネルギー利得が得られ、より実験データに一致する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の大きな目的の一つである、``container''描像に基づいた原子核クラスター構造の統一的記述に向けて、その``container''描像型模型波動関数である、THSR波動関数を適切に拡張し、負パリティ成分を含む形に定式化することに成功した。これを用いて12Cの負パリティ状態の計算の第一段階の結果を得た。これにより、次年度以降16O, 20Ne等より重い核を調べていくうえで大きな道筋をつけることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
1. 負パリティ成分を含む形に拡張されたnα-THSR波動関数の12C、16Oへの適用。今年度新手に定式化した、負パリティ成分を含むTHSR波動関数を用いて、12Cの負パリティ励起状態の研究を推進する。及び16Oにおいて12C+α間に負パリティ成分を取り入れることにより、16Oの基底状態から4α凝縮状態へ至る状態間の構造変化のプロセスを調べる。
2. 12C+2α、5α直交条件模型を用いた20Neの5α凝縮状態の研究。20Neの20MeVより上に存在することが実験で示唆されている5α凝縮状態を理論的に再現することを目的として、まずは12C+2α直交条件模型、そして5α直交条件模型をガウス基底関数法と組み合わせて調べていく。
3. ``container''描像に基づいた、core+余剰核子系の研究。今年度拡張を行ったnα-THSR波動関数に余剰核子を付加させた模型波動関数を、Cアイソトープ系、つまり3α-THSR波動関数+余剰中性子、の形で適用し、``container''描像が中性子過剰核でどのように成立、または変更を受けるのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 海外旅費使用の際の航空券代金が予約時期により多少前後するため、当初予定より余剰分が生じた。 (使用計画) 海外旅費使用の際の航空券代金に使用する。
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