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2020 年度 実施状況報告書

格子上の位相荷の不定性とクォーク質量の定義

研究課題

研究課題/領域番号 18K03662
研究機関大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構

研究代表者

山田 憲和  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (50399432)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード素粒子 / 非摂動力学 / 格子シミュレーション / CP対称性 / トポロジー
研究実績の概要

2020年度も引き続き4次元SU(2)ゲージ理論の位相の性質について調べた。格子ゲージ理論に基づき、10万個程度のゲージ配位を生成し、その上で位相荷を計算することにより、位相感受率を決定した。ただし、この量は素朴な方法ではうまく計算できないことが昔から知られている。そこでsmearingと呼ばれる配位をスムーズにするfilterを通して測るという方法がよく使われているが、このsmearingは消したいゴミを消すだけでなく残したい物理的な励起状態も変えてしまう。そこで、ゴミを消した後、残したい物理的な励起に関する情報を復元する方法を発案し、SU(2)の位相感受率の計算に応用した。その結果、様々な方法で計算された先行研究の結果とよく一致することが分かり、私の手法の正しさが裏付けられた。この方法を更に応用し、SU(2)ゲージ理論の真空エネルギーのθ依存性の研究を行った。具体的には、θの関数である真空エネルギー密度e(θ)をθ=0の周りでテイラー展開し、その最初の2項の係数を決めた。最初の係数は位相感受率であり、2つ目は b2 と呼ばれるものである。SU(N)のラージN極限では位相感受率は有限であり、b2は0になることが知られている。一方、N=2でb2の値が計算されたことはなく、世界で初めての計算となった。4d SU(2)でθ=πのとき、2d CP(1)模型からの類推からe(θ)~cos θ となることが予想されていたが、驚くべきことに位相感受率もb2もNの解析関数であるかのように振る舞い、その結果N=2もN=∞と同様にθ=πで自発的にCPが破れることを示唆する結果を得て、論文に纏めて発表した。その後、この点を更に調べることができるsubvolume法を開発し、世界で初めてθ=πの直接計算を実行し論文に纏めて発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2020年度は、格子ゲージ配位のsmearingの効果について掘り下げた研究を行い、それをSU(2)のθ真空の研究に応用し成功を収めた。この中で、通常は符号問題と呼ばれる大問題のために不可能とされてきたθ真空の研究を可能にする手法を開発することができたことは、当初予期していなかった点である。この手法を用いるとθ-T平面における理論の相図を作成することが原理的には可能になるため、どの程度の計算が可能か様子を見るために試験的な研究をしているところである。その結果、クォーク質量の不定性に関する研究は少し後回しになるが、概ね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

上述の通り、世界でまだ誰も成功したことがないゲージ理論のθ-T平面の相図の完成に向けてSU(2)とSU(3)ゲージ理論の試験的な研究を始めたところであり、これまでのところ順調に来ている。この手法を応用すると、有限密度の研究も可能となるためそちらの試験的な計算も開始する予定である。

次年度使用額が生じた理由

旅費として使用する機会が無かったため、次年度使用額が生じた。次年度は、on-line会議用の周辺機器を購入するなどして相殺する見込みである。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Is N = 2 Large?2021

    • 著者名/発表者名
      Kitano Ryuichiro、Yamada Norikazu、Yamazaki Masahito
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 2021 ページ: -

    • DOI

      10.1007/JHEP02(2021)073

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2021-12-27  

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