研究課題/領域番号 |
18K03664
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
福田 善之 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (40272520)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ニュートリノ / チェレンコフ光 / パルス波形分別 / 二重ベータ崩壊 / バックグラウンド除去 / タリウム208 |
研究実績の概要 |
本研究では光電子増倍管の集光率を64%にした場合にZICOS用液体シンチレータが2.6%@3.35MeVのエネルギー分解能を有することを確認することとともに、1MeV程度のエネルギーの電子から放射するチェレンコフ光とシンチレーション光の波形の違いから波形分別法の開発を行った。まず、120mLバイアル用ライトガイド(集光率40%)を作成し、汎用の2インチ光電子増倍管H6410を4本配置してZICOS用液体シンチレータの光量とエネルギー分解能を測定したところ、全光量はほぼ予定通りの結果であったが、エネルギー分解能は2本用ライトガイド(集光率10%)で観測した13%@1.02MeVと同様の結果であった。これは、各光電子増倍管のゲインが揃っていなかったことが原因であるため、今後ゲイン調整した後に再度測定を行う予定である。一方、チェレンコフ光とシンチレーション光の波形分別法については、ZICOS実験用液体シンチレータを充填した20mLバイアルに対し、鉛ブロックでコリメートしたSr-90からのベータ線を用いて入射方向から20度方向に光電子増倍管H2431-50(上昇時間:0.7ns、TTS:0.37ns)に設置してシンチレーション光が主となる波形を計測し、それに対しCo-60、Cs-137、Ba-133からのガンマ線を同バイアルに照射し入射方向から40度方向(チェレンコフ光が放射する方向)にH2431-50を設置して信号波形を観測したところ、波形ピークの3ns程前の立ち上がりに相違が存在し、シンチレーション光の波形テンプレートとのカイ2乗検定によりチェレンコフ光の有無を数値として事象毎に判断できることに世界で初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
0.5nsの時間分解能を有するFADC V1751を用いた1MeV以下の電子によるシンチレーション光とチェレンコフ光のパルス波形分別法は、当初、最終年度に開発する予定であったが、2年目において世界で初めて可能となったことから非常に前進したため。また、2年目に実施予定であったエネルギー分解能については、未だ目標値の観測がなされていないが、光電子増倍管のゲインを調整することにより改善することが既にわかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
エネルギー分解能の観測には、各光電子増倍管のゲインを揃えることにより、目標値である64%の集光率で2.6%@3.35MeVのエネルギー分解能が得られるはずである。ゲインを合わせるため、20mL用のライトガイドに4本のH6410の光電子増倍管を1本毎に設置し、Co-60の1.17MeV/1.33MeVのガンマ線のコンプトン端のADC値が一致するように印加電圧を調整し、ゲインを揃える。その印加電圧を用いて、120mL用ライトガイドに4本のH6410を設置して、全光量と全体のエネルギー分解能を測定する。これらの測定のための光電子増倍管やZICOS用液体シンチレータ、ライトガイドは既に購入済みであるため、本年度の予算内で研究を実施する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
液体シンチレータを入れたバイアルと光電子増倍管を接続するために使用するブラックテープが不足してきたため、サンゴバン社のブラックテープを購入しようとしたところ、20本一括による購入のみを要求されたため、次年度使用額から10万円を前倒し申請した。その後、サンゴバン社以外にエルジェン社からブラックテープが安価に購入できることが判明し、次年度使用額が生じた。このため、次年度に予定していた国際会議または日本物理学会での発表のための旅費に予定通り使用する計画である。
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