研究課題/領域番号 |
18K03670
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮川 治 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (90532680)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 重力波 / 重力波検出実験 / 干渉計 / 精密測定 / 制御 / フィードバック制御 |
研究実績の概要 |
本研究は、重力波天文学時代を見据え高解像度の制御系をKAGRAの主鏡の一つに導入し、性能、安定性などの基礎的な検証をすることを目的としている。 現在のKAGRAでは信号分解能の制限からくるダイナミックレンジの不足で、例えば非常に大きな重力波を取りこぼしてしまうような可能性がある。これらの問題を解決するために、今年度までに新たに高分解能信号出力のための20ビットデジタルアナログコンバーター、高周波の偽信号を除去するためのアンチイメージフィルターを設計、開発してきた。これらハードウェアを動かすためのソフトウェアについても、20ビットかに対応できるように開発、実装を進めた。現在、きちんと全体として動作するかどうかの確認、性能が出ているかどうかの評価試験を進めている。 本研究で検証した装置を、KAGRA本体の実際のアクチュエータ部分である防震装置の最終段へ導入する計画も進んでいる。今年度計画されている防振装置のアップグレードに際し、スムーズにKAGRA本体で動作させられるように、新たに多数の信号を追加できるような拡張ボックスを設計、開発している。このため、本研究のKAGRA本体での試験にとどまらず、本格的な運用にまで適用できる見込みが出てきた。 なおKAGRA全体への適用については本研究の成果の検証の後、別の予算を申請して進めていく計画であったが、本研究を拡張させる形で、2020年度から別途基盤AによってKAGRAへの本格組み込みを想定した研究が開始されている。本研究の研究代表者は基盤A研究の共同研究者となっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで使用してきた16ビットのデジタルアナログコンバーターのテスト環境を利用し、今回新たに20ビットの高分解能デジタルアナログコンバーターによる制御が可能かどうかの検証を進めている。特にアンチイメージフィルターと呼ばれるデジタル信号からアナログ信号に変化する際の、余分な雑音を除去するフィルターは、これまで使ってきた16ビット対応のものでは雑音が大きく不十分で、4ビット分(16分の1)低雑音化しなくてはならないことが判明した。そのために回路全般を新たに設計、製作した。現在までに回路の動作確認検証が済んでいて、20ビットの高分解能デジタルアナログコンバーターと合わせた動作確認テストを継続中である。合わせて、制御系のソフトウェアも、現在の16ビット出力のものを20ビット化する必要があるが、こちらも対応済みであり、動作確認をした。 KAGRA本体が2020年度初めまで観測が続き、これまでのセットアップを壊したくないため、組み込みが遅れているが、その代わりにカードをスムーズにインストールできる準備として、新たにデジタルアナログコンバーター、アナログデジタルコンバーターなどを大幅に追加できる拡張ボックスを設計、開発している。こちらは当初の計画を超えて進んでいて、KAGRA本体を用いた試験のみならず、重力波観測まで含めた本格運用までたどり着ける見込みが出てきている。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度終わりまで続いたKAGRAでの重力波観測期間が終わり、2020年度は再びKAGRAの防振系のアップグレードが予定されている。その期間に当てはめる形で、これまで準備してきた20ビットの高分解能デジタルアナログコンバーター、アンチイメージ回路を合わせてKAGRA本体に組み込む準備を進める。 この組込みの一部は、本研究の成果をもとに今年度から始まった基盤Aの研究に拡張させる形で進む予定である。具体的には20ビットデジタルアナログコンバーターを多数用意し、それを搭載する拡張ボックスの開発を進める。 今年度末には複数のメインの防振装置に本装置が組み込まれ、鏡の角度、位置を高い分解で制御し、感度、安定性ともに大幅に向上することが期待される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会参加のための出張旅費を見込んでいたが、コロナウィルス禍で出張が中止になったため。
|