本研究は、重力波天文学時代を見据え高解像度の制御系をKAGRAに導入し、性能、安定性などの基礎的な検証をすることを目的としている。現在のKAGRAでは信号分解能の制限からくるダイナミックレンジの不足で、例えば非常に大きな重力波を取りこぼしてしまうような可能性がある。これらの問題を解決するために、2019年度までに新たに高分解能信号出力のための20ビットデジタルアナログコンバーターを入手し、それに付随する回路の設計、製作やソフトウェアについても開発、実装を進めてきた。 2020年度は20ビットデジタルアナログコンバーターが単体で動作することを確認し、さらに制御システムの一環としてきちんと全体で動作するかどうかを、テストベンチに組み込み確認した。これまでの16ビットビットデジタルアナログコンバーターのノイズを3-4倍改善することができるため、KAGRA本体での低周波での感度向上が期待できる。スケジュールの関係上、KAGRA本体の実際のアクチュエータ部分に組み込むことは実現しなかったが、これは引き続きタイミングを見て導入を試みる。 なおKAGRA全体への適用については本研究の成果の検証の後、別の予算を申請して進めていく計画であったが、本研究を拡張させる形で、2020年度から別途基盤AによってKAGRAへの本格組み込みを想定した研究が開始された。本研究の研究代表者は基盤A研究の共同研究者となっていて、本研究の成果をベースとして、実際に必要な数の信号を取り扱う目処がつき、2022年度から始まるO4 (Observation 4)と呼ばれる観測で、より安定化したKAGRAの動作を実現することが期待できる。
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