研究実績の概要 |
本研究で導入した検出器診断ツールが、2020年4月に行われた重力派検出器 KAGRAとGEO600 (独) の初の共同観測 (O3GK) において、不可欠な役割を果たした。 先年度の単独観測に引き続き、O3GKでも、ステートベクターを生成した。ステートベクターは(1) 検出器そのものが稼働していたか (2) 稼働のためのさまざまなパラメタに異常がなかったか (3) データが取得される時に、Analog-to-digital 変換器のレンジを外れていなかったか (4) 外部からの信号注入がなかったか、の情報を遅延なく判別する。(1)-(4)すべての条件を満たしている場合には、検出器データが重力波探索に使用可能であることを示す「サイエンスモード」として判別される。さらに何時から何時までがサイエンスモードであったかを示す、セグメント情報も提供した。これらの情報を元に重力派信号探索が行われた。検出器ハードウェアの調整の関係で、一部、手動でサイエンスモードを判別するこということも行なった。さらに、昨年度導入されたさまざまな干渉計診断ツール (omicron, Fscan, heveto) もO3GKのデータ解析に用いられ、干渉計ノイズが統計的に調べられた。 次回の観測では LIGO, VIRGO との共同観測が予定されており、KAGRAの感度も大幅に向上する見込みであるため、実際に数例以上の重力波の検出が期待される。検出器診断の研究としては、ステートベクターの信頼性向上が求められるうえ、「サイエンスモード」を、さらにデータの定常性といった質の良し悪しで分類することが求められる。その準備として、新たな計算機を購入、設置した。この計算機を用いることにより、これまでは計算コストから制限されていたさらに複雑な解析(重力波チャンネル以外の補助的なデータも用いた相関解析など)が可能になる。
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