天然に存在する安定核に中性子を加えていくと、あるところで中性子を束縛できなくなる限界(中性子ドリップライン)に到達する。酸素・フッ素同位体では中性子ドリップラインが急激に変化する酸素ドリップライン異常という現象が知られている。現在のところなぜドリップラインの急激な変化がこの領域で起こるのかは明らかになっていない。本研究では、アイソスピン増加型の荷電交換反応を用いて超中性子過剰な酸素同位体25O、27Oを生成して分光を行うことにより、この特異現象の原因の解明を目指す。さらにアイソスピン増加型の荷電交換反応ではより中性子過剰度の高い原子核を生成することができるという利点があり、本研究によりこの反応を用いた分光法を確立する。 最終年度では25O、27Oの分光実験のガンマ線検出器についてモンテカルロシミュレーションを行い、セットアップの検討を行った。既存のCsI(Na)シンチレーターアレイCATANAに加え、NaI(Tl)シンチレーターを設置することとした。これによりガンマ線の検出効率を3割向上させることができる。これをもとに標的ホルダー及び標的チェンバーを設計し、製作を行った。 また中性子過剰なZ=9-12の同位体では殻構造異常が起こることが知られ、その領域は逆転の島と呼ばれている。この逆転の島の領域における殻構造異常の理解を深めることも酸素ドリップライン異常の理解には不可欠である。過去に行った実験のデータ解析を進め、29Neのf波共鳴状態を同定した。多くの理論では比較的低い励起エネルギーを持つ束縛状態であると予想されていたが、理論予想に反して高い励起エネルギーをもつ非束縛状態であることが明らかとなった。この結果は学術雑誌で報告を行った。
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