研究課題
本研究では,新たな散乱長測定実験を行なって液体キセノン中の真空紫外(VUV)光の散乱強度の波長依存性を調べ,理論と比較することで光散乱過程の詳細を明らかにする。実験では,新規開発した外部光源のVUV光の細いビームを液体キセノン中に通し,前方において一次光の減衰を測ると共に散乱光も測定する。最終年度の今年度は,真空チェンバ内に設置された円筒状のステンレス製断熱容器に約11mlの液体キセノンを貯め,容器の両端にあるフッ化マグネシウム窓を通じて容器の中心軸上に外部光源のVUV光を通した。外部光源は,VUV域から可視域まで広波長域で光を発するフッ化マグネシウム窓のキセノンフラッシュランプと既存のVUV分光器を組み合わせて開発した。光源の光は分光器で波長を選択し,集光レンズと絞りで光束を絞って細い光ビームを実現した。光ビームは,光学系の調整により,太さは最大で約3mm,波長分解能は約5nmで,十分な光量を確保した。液体キセノンを通った光は,反射高速電子線回折で使用実績のある蛍光板で可視域の蛍光に変換した。蛍光は,真空チェンバ外からビューポートを通じて超高感度かつ低ノイズな測光系で画像計測した。測光系は,科学用冷却CCDカメラと民生品のマクロレンズを組み合わせて新たに開発した。画像計測は,VUV領域の約160nmから紫外領域の約250nmまで波長スキャンして行い,得られた画像データは,その解析を慎重に行なって公表に向けた論文作成に着手した。以上の内,VUV分光器とキセノンフラッシュランプを組み合わせた光源については,液体キセノンのVUV発光の測定を行なう研究において研究代表者等が開発中の技術を共用していることから,関連技術として2023年夏に開かれたSMART2023研究会と,2024年1月に行われた研究会「放射線検出器とその応用」において一部を発表した。
すべて 2024 2023
すべて 学会発表 (5件)