研究課題
国際宇宙ステーション搭載全天X線監視装置MAXIが稼働開始から現在までに観測したBe X線連星のこれまでのデータ解析により、V0332+53、4U0115+63についてX線光度変化に伴うスペクトル変化が見られた。令和元年度は、これらのスペクトルを詳細に解析し、X線光度に応じて中性子星磁極付近でのサイクロトロン共鳴エネルギーが変化することで、X線の吸収帯域が変わり、MAXIでの観測エネルギー帯域ではスペクトルの硬度変化として現れる事がわかった。Be X線連星の可視光とX線の光度変化に対する調査では、Swift J0243.6+61のジャイアントバースト時には、可視光とX線の間で増光に時間的ずれは見られなかったものの、ノーマルアウトバースト時には可視光増光が先行して起こっていることが分かった。しかし、EXO2030+375では、ノーマルアウトバースト時のX線と可視光の増光は同期しており、V0332+53ではノーマルアウトバーストに伴う可視光増光は見られないなど統一的な性質は見られず、可視光増光とX線増光の起源を考えるには、さらにサンプルを増やしていく必要がある。また、V0332+53では、アウトバーストを起こしていない静穏時において、可視光は10日から30 日程度のタイムスケールで周期的変動をしている兆候が見られており、この変動が他のBe X線連星でも見られるのかを確認していく必要がある。X線観測はMAXIにより継続して観測されているが、可視光観測例を増やすために観測システムの自動化が必要である。令和元年度は望遠鏡制御のための基本的なソフトを構築し、現在はその精度を上げるための観測、調整を行っているところである。
3: やや遅れている
Be X線連星のX線と可視光による観測、および解析は順調に進めることができ、X線光度変動とスペクトル変化の関係について、物理的パラメータと関連付けて説明できることが分かった。また、X線と可視光の光度の時間変化についてはバラエティーに富んでおり、それらの結果の蓄積を開始することはできた。このような光度の時間変化を統一的に解釈することは今後の課題であり、国内外の研究者との議論も必要であるが、参加予定であった国際会議が中止になったため、研究の進捗において若干の遅れが生じている。口径50cm望遠鏡を利用した可視光観測は主に手動で行った。観測の自動化に向けた整備については、望遠鏡制御の基本部分は出来ており、今後は精度を上げるために観測しながら調整していくことになるがほぼ順調に進んでいるといえる。以上により、本研究はやや遅れが生じていると判断した。
令和2年度は、COVID-19拡大の影響で口径50 cm望遠鏡による可視光自動観測システム構築のための調整作業を開始できない状況にあったが、現在は徐々に作業が認められることとなったので、本格的な調整作業を開始しシステムの完成を目指す。上記作業と並行して、ブラックホール連星やBe X線連星の可視光フィルター観測を継続し、国際宇宙ステーション搭載全天X線監視装置MAXIによるX線観測データの解析も行い、二つのエネルギー帯域における光度変化の関係について、その観測例を蓄積する。また、即時観測を担う口径30cm望遠鏡システムでは、本年度中に予定されているLIGO/Virgoの試験観測によって発見される重力波イベントやガンマ線バースト、人工衛星等で発見されるX線増光天体について可視光観測を継続して行う。このように、観測によって得られるデータを解析し、より多くの結果を収集するための自動解析の整備を進めるとともに、得られた解析結果をもとにMAXIチームを主とする他研究者との議論を通じて研究成果をまとめていく。
当該年度の未使用額は、すべて年度末に予定されていた国際会議と学会への参加のための予算であり、出張の書類提出後に開催が中止されたものである。国際会議については次年度開催の予定とされているため、そのための費用として使用する予定である。また、学会についても年2回開催されているので、開催可能な年会参加に使用することを考えている。
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