研究実績の概要 |
本研究は、パラ水素誘導偏極法(Para-Hydrogen Induced Polarization, PHIP法)を用いて19F原子核を含む化合物を超偏極させる技術の開発を目的としている。PHIP法は、水素化反応を用いて化合物中の2重結合または3重結合に触媒存在下でパラ水素を付加し、化合物の電子を仲立ちとして、付加した1Hの偏極を化合物中の原子核に移して超偏極化合物を生成する手法である。将来的には、超偏極19F化合物を造影剤として利用し、MRIの感度を向上させることを目指している。 19F化合物として3,3,4,4,5,5,6,6,6-Nonafluoro-1-hexene(以下、Nonafluorohexeneとする)を用いて水素化反応を効率的に促進する触媒や条件について,19F-NMRを測定することにより検討を進めてきた。通常、水素化反応に用いられる1-Hexene(Nonafluorohexeneの19Fが1Hの化合物)などに比べるとNonafluorohexeneは反応が起こり難く、さらに1H-NMRではなく19F-NMRを測定することもあり、水素化反応を確認するまでに時間を要した。また、この検討ではパラ水素ではなく通常(常温)の水素を用いたが、Nonafluorohexeneの水素化反応には数時間を要した。一方で、パラ水素を用いるPHIP法では減偏極を考慮すると迅速に水素化反応が進む必要がある。水素化反応では反応溶液に溶けこんだ水素が寄与するため、水素の圧力を高くすると反応が速く進むと考えられる。このため、大気圧より少しだけ高い圧力で水素化反応を行ったところ比較的速く進んだ。今後は数気圧の水素を用いることを検討しているが、水素化反応用の機器が対応していないため、数気圧に耐える機器の準備を進めている。
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