研究課題
前年度から厚さ500μmガラス板ベースの原子核乾板を用いた新しい空気ギャップ型CES構造体の宇宙線照射実験を実施している。今年度の宇宙線照射実験では、照射時間を約2倍にして統計の向上と再現性の確認を目指すとともに、原子核乾板1枚での測定精度を求めるために、密着乾板2枚組パックを最下流に設置した。まずその2枚組の解析では、乾板に対して傾きを持った飛跡の場合に測定精度が悪くなる傾向が見られた。そこで、飛跡を含む面と乾板面の垂直交線方向(L軸)と乾板面上でL軸に垂直な方向(T軸)からなるLT座標系に変換し、解析を行ったところ、T軸方向では入射角度によらず、乾板1枚の測定精度として、位置分解能、角度分解能ともに十分満足な値を得ることができた。次にCES部分の解析方法を見直した。従来から2層間の飛跡連結の際には、乾板の拡大縮小(スケーリング)と乾板間隔(zシフト)を調整することにより、予測位置と測定位置のずれを最小化してきたが、CES解析時には、この2つのパラメーターはそれぞれ設計値の1、15,000μmを初期値として、微調整を行うように変更した。この解析手法の見直しにより、測定されたサジッタ分布の幅はシミュレーションによる予測とよく一致し、2回の実験間での再現性も確認できた。本研究の目的は、正・反タウニュートリノを識別して研究するためのコンパクト・エマルション・スペクトロメーター(CES)の実用化推進である。研究期間全体を通じて実施した加速器ビーム照射実験の解析と2回の宇宙線照射実験により、CESに適したガラスベース乾板の塗布法とCES本体の製作法を見出すことができ、CESにおける飛跡サジッタの測定精度はほぼ理解することができた。その結果、CESの電荷識別性能を決める飛跡サジッタ測定の最適な解析手順を確立できた。今後は、タウニュートリノ研究の実験に組み込む実機の設計と製作である。
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