研究課題/領域番号 |
18K03683
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
足立 一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (00249898)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光検出器 / シングルフォトン / チェレンコフ光 |
研究実績の概要 |
プロトタイプ1号機から4号機までの性能試験完了後、これらを総合試験のため光検出システムと組み上げ、読み出し電子回路と接続した。この試験セットアップを用いて、基本的な試験から開始し、レーザー光を照射した反応試験全般を実施することができた。さらにエアロゲルをチェレンコフ輻射体として光検出システムの上流部に設置し、宇宙線を用いることでチェレンコフリングを検出し、その反応精度から検出器の性能を測定するデータ収集を実施した。取得したデータは詳細について解析中である。一方で、計算機シミュレーションについては、今までに得られたデータから検出器の反応をさらに精度良く再現できるよう改善に取り組んだ。具体的には検出器の入射位置による反応の依存性など四つのプロトタイプ光検出器のそれぞれの特性をコード上にデータベースとして読み込むこととした。この変更により将来プロトタイプの変更があった場合にも柔軟に素早く対応でき、汎用性の高いコードとなった。一方、今回用いた読み出し電子回路からの電気的雑音をシミュレーションのプログラムに取り入れた。これらの改善によって光検出システムから得られるチェレンコフ角の精度ととともにノイズからの寄与なども精度よく再現できるようになった。磁場シールドについては、計算機能力の高いシステムを用いて詳細な磁場シミュレーションを行った。その上で上記の改善したプログラムを用いて光検出器の反応を評価した。この結果からシールド形状のさらなる評価をすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までの活動で準備が整い、総合試験を進めることができたといえる。研究期間を延長したことによって、当初予想された時間よりも多くの時間を試験に使用できることができたため、検出器として、より詳細な試験を進めることができた。この総合試験で収集したデータについては、解析結果の速報では、ほぼ予想された性能が得られる見込みがわかっている。詳細な性能評価のための解析は現在進行中である。実験していた温度など環境要因などの補正も考慮した解析を実施している。また、ソフトウェアとしても、プログラムの改善をさらに推し進め、詳細な実験結果を再現できるようなアルゴリズムやプログラム構成の改良を行い、将来に向けて幅広い適用にも可能となった。 総合評価としては上記のように簡易的な解析では結果が得られているが、今後の詳細な解析によって、より深化した光検出のメカニズムまで理解し、評価したいと考えている。また、新型コロナによって海外出張が簡単でない状況があり、イタリア・ナポリ大学やスロベニア・ジョセフシュテファン研究所の専門家と光検出性能について、リモートでは議論しているものの、お互いの実験結果詳細について直接議論できていない。現在は関係する研究者などと議論を進め、今後の国際的な直接的交流にむけて準備を行なっている。さらに一年延長できることを考えると、研究全体としては、出張により直接的な議論を深め、総合評価をすすめ研究成果をまとめることができるというのが全体の進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
上記で記したように、現在の解析を進め、総合結果としてまとめることが中心的課題である。解析については実験環境の影響など、考えうる補正要因を調べ、正確な性能評価となるようにする。その上で、改善された計算機シミュレーションプログラムを使用して、実験結果の再現可能性を調べる。この時に信号だけでなく、雑音などもできるだけ正確に把握した上でシミュレーションに取り組む。さらに、信号部については、フォトカソードでの光電子生成過程や、MPPC内での増幅過程なども計算機によって再構成することで、より詳細な光検出メカニズムの理解につなげる。その上で、適宜海外出張することで光検出に関する専門家と直接的な議論を行い、解析手法の改善からシミュレーションアルゴリズム改良など詳細にわたって理解を進め、結果にフィードバックする。これらをもとに総合評価としてまとめる。この結果は検出器関係の国際会議などで成果として発表し、専門家のコメントや評価を受けることを目標とする。得ることのできたコメントについては、結果を再考するなど深い理解につなげる。また、自らも研究会などを開催し、成果をより深く示し、今後のこの分野の発展に寄与する活動も実施する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外出張が簡単にできず、海外の専門家と得られた結果の詳細について直接議論できなかったため、最終的な結果としてまとめることが困難であったため。積極的に海外を含めた専門家と議論をし、結果への理解を深めた上で、総合評価としてまとめる計画である。
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