研究課題/領域番号 |
18K03687
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
榎園 昭智 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 協力研究員 (20638118)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中性子検出器 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、波形分別型(PSD)プラスチックシンチレーターを用いて小型かつ高速にガンマ線・中性子識別が可能な検出器を作り、理化学研究所SCRIT実験において電子・短寿命不安定核散乱実験における非弾性散乱事象の中性子トリガー検出器とすることである。実験において本検出器はトリガーカウンターとしてガンマ線・中性子識別をオンラインで行う必要があるので、本研究における重要な開発要素の一つはプラスチックシンチレータからの出力波形をデジタイズしてFPGAを用いた計算処理により高速に識別を行うことである。そのためにFPGA搭載の100MHzサンプリングレートのデジタイザーカードを購入した。 ここで問題はFPGAにプログラム可能な計算処理には限界があり、よりシンプルなロジックで高度な波形識別を行わなければならないことである。そこで本年度はまだ実機検出器が完成してない状況なので、以前にテスト目的で購入したPSDシンチレーターで取得した波形データを用い、FPGAに実際に搭載可能なロジックの考案、そのロジックを用いた場合のガンマ線・中性子識別能力の評価を行った。その結果、フィッティング等を用いた高度なオフライン計算・解析と比較して現段階のシンプルなロジックではS/N比で数倍識別能力が落ちることが判った。これを改善するためには、デジタイザーボードの100MHzより高いサンプリングレートのデジタイザーを使うか、より高度なFPGAロジックの開発が必要となる。ただし高サンプリングレートのデジタイザーカードは価格的に高価になるので、まずは高度なFPGAロジックが実装可能か検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は当初の計画では初年度前半には全ての関連物品の購入を済ませ、後半には検出器の製作を完了させ性能評価実験を行う予定であったが、進捗は遅れており、本年度は検出器製作に必要な物品の調達を行った段階で終わっており性能評価までは進んでいない。 遅延した理由としては当初の計画より使える予算が限られてしまい、もともと新規購入予定であった検出器の一部である光電子増倍管を他の実験で使わなくなったものを譲り受けることに切り替えた点が一つ、もう一点は中性子検出器の要であるEljen Technology社のPSDプラスチックシンチレーターの購入・納入に時間が掛かったことにある。(このPSDシンチレーターは発光量、透明度などの改善を繰り返しており、当初予定していた型ではなく、新しいバージョンのものが出たのでそれを購入した。) しかしながら上記概要に記述したように、以前購入した旧プラスチックシンチレータで取得したデータを用いた予備解析をおこない、FPGA実装の準備をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
既に検出器製作に必要な器材は購入を完了したので、個々の1チャンネル検出器の組み立て及び動作確認を行い、旧PSDシンチレーターを使った検出器との性能比較を行う。まずは以前から使用しいている読み出し回路でデータ取得を行い、オフライン解析による波形分別の性能評価を行うが、同時にFGPAにプログラムするガンマ線・中性子識別ロジックはよりシンプルかつ分別精度の高いものを考え出していく。 1チャンネル検出器での性能評価が済み次第、8チャンネル(3x2x3セグメント)の検出器を製作し、デジタイザーカードを用いた8チャンネル同時読み出しを行う。この8チャンネル検出器はSCRIT実験における電子蓄積リングの衝突点近傍に設置し、高ガンマ線環境での動作テストを行う。ここで得られた情報より、本実験での電子・短寿命不安定核の散乱ルミノシティからシグナル・バックグラウンド比(S/N)がどの程度になるか見積もる。本実験に際してS/Nが十分でないと判断されれば、更に追加で鉛によるガンマ線遮蔽を講じていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
読み出し回路として使うFGPA搭載のデジタイザーカードを当初は100MHzサンプリングレートのものを初年度に買う予定だったが、予備解析の結果、少しサンプリングレートが高いものを買う必要があるかもしれないことが判ったので購入を見合わせている。もう少し検討をしてから購入手続きに入る。
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